糸魚川市来海沢地区 地滑り災害工事現場 土砂流出 谷止工一部損壊 11世帯21人再び避難

 糸魚川市来海沢地区の地滑り災害の復旧、防止対策が進む工事現場で29日、設置が完了した谷止工のうち1基が、同日の大雨で流出した土砂に押されて一部損壊した。

流出した土砂に押し出され、継ぎ目を境にずれ(写真右側)が生じた谷止工(30日午前7時30分ごろ、県糸魚川地域振興局農林振興部提供)

 市は万一に備えて同地区住民11世帯21人に避難指示を発令。解除の見通しは立っていない。一定期間の避難が見込まれるため、同市上刈3のホテルを避難所とし、5世帯9人(30日午後3時30分現在)が避難した。この他は親戚宅などへ避難している。
 県糸魚川地域振興局と地区代表者らが30日午前に現地を確認した。県の報告によると、一部損壊した谷止工は、麓から上がって一つ目に設置した1号と現在工事が進む上部の3号との間の2号(延長91メートル、高さ14メートル)。倒木や水を含んだ土砂が流れ込み、加重によってコンクリートの継ぎ目を境に、ねじれるようにして前へ押し出された模様。

住民と県、市消防らが地滑りの応急工事と県道通行止め規制、避難対応について情報や要望を交わした(来海沢会館)

 同振興局農林振興部の保苅洋一副部長は「かなりの土砂だったが、何とか耐えて下(1号)の谷止工まで影響はなかった。水を含み軟らかい土が下に潜って押し出した。想定以上だった」と説明。応急策として谷止工の前に盛り土をして安定させるための土砂搬入を始めた。同時に流出した土砂の撤去やセンサーの取り付けを進める。
 令和3年3月4日に地滑り災害が発生し、今年4月には避難指示の一部解除、復旧工事の進ちょく状況が住民に説明された。住民の中にはこの2日前に避難先から自宅へ戻ったばかりの人もいる。復旧が進む中で再び避難生活を余儀なくされ、「がっかりの結果」「残念だ」という声が漏れた。松澤英夫区長は「想定外が起きるのが災害。一刻も早く安全になるよう努めていただきたい」と話した。

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