万博から富山へ、流れ作る 南砺出身・河森正治さん、25年の大阪・関西プロデューサーに

大阪・関西万博への思いを語る河森さん=都内

  ●富山新聞社インタビュー

 南砺市出身で、テレビアニメ「マクロス」シリーズなどで知られるアニメ監督の河森正治さん(63)は30日までに、富山新聞社のインタビューに応じ、テーマ事業プロデューサーを務める2025年大阪・関西万博に向け「万博に行った人が富山に行く流れを作りたい。万博とタイアップした取り組みを富山でも展開したい」と語った。万博の目玉の一つとなる河森さんのパビリオンは「いのちの循環」がテーマで、「富山がルーツの一つになっている」という構想を明かした。

  ●パビリオンを担当、テーマは「いのち」

 大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に沿う八つのテーマ事業をそれぞれ担当するテーマ事業プロデューサーとして、映画監督の河瀬直美さんらとともに名を連ねる。河森さんが手掛けるテーマ館は「いのちを育む」をコンセプトにパビリオンを作る。

 河森さんによると、現実の生命や実物を映像などで見せる「リアル展示」と、想像力や感受性を刺激し、生態系や命を感じてもらう「感覚展示」がパビリオンの柱になる。

 リアル展示では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星探査計画で会期中に探査機が火星に近づく予定で、探査機の画像を巨大スクリーンに投影する計画。生物の成長や死、気象衛星ひまわりから見た地球などをタイムラプス的(こま送り)に見せる構想で「実験したら雲の動きが生き物のように見え、すごく面白かった」と手応えを示す。

 感覚展示では、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術を活用した「XRシアター」で、いのちの循環を表現し、「ミクロからマクロまでスケールを変えた没入体験になる。いのちのはかなさや、こんなにすごいんだっていうのを伝えられると思う」と語った。

 テーマ館のシンボルとして制作しているのが「いのち球」だ。多様な生態系のつながりを球体で表現し、1970(昭和45)年の大阪万博の象徴となった太陽の塔のような存在にしたいという。

  ●作品生かして恩返し

 河森さんが手掛けてきた作品と万博も深く結びついている。

 小学5年の時に行った70年の大阪万博で世界の多様性に衝撃を受けた。アニメ「マクロスF(フロンティア)」は宇宙を旅する移民船団が舞台で、河森さんは「万博を意識した訳ではないが、今思うと、世界中のものがごちゃまぜになっているのはまさに万博そのもの」とし、船のデザインも当時のアメリカ館に影響を受けていると明かす。

 かつての万博で感じた衝撃を原点として創作活動を続けてきた河森さん。今度はその創作の経験を生かして、万博に恩返しする。さらに万博の機運醸成に向けた取り組みを富山でも実施する考えを示した。

 ★河森正治(かわもり・しょうじ)1960(昭和35)年、南砺市(旧平村)生まれ。78年にアニメ「闘将ダイモス」のゲストメカデザインでプロデビュー。SFや巨大ロボット作品を多く手掛ける。20代で監督を務めたマクロスシリーズでは若手の旗手として注目を集め、サブカルチャーに多大な影響を与えた。メカニックデザイナーとしてはペットロボット「aibo」のカスタムデザインを担当するなど工業製品も手掛ける。

 ★2025年大阪・関西万博 大阪市・夢洲で2025年4月13日から10月13日まで開催される。メインテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。日本での万博開催は愛知万博以来、20年ぶりとなり、150カ国以上が参加する見通し。万博を契機に地域の魅力発信を目指す万博首長連合の会長代行に田中幹夫南砺市長が就いており、万博担当相は岡田直樹参院議員(石川県選挙区)が務めている。

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