米輸出、前年比4割増 米国産不作、価格逆転も

2023年の米輸出が、好調だった前年をさらに4割上回るペースで推移している。けん引するのが北米向けだ。米国産米が干ばつの影響で高騰する中、円安傾向で値頃感のある日本産米の引き合いが強い。現地の店頭価格は、米国産が日本産米を上回る“逆転”も起きている。今後も輸出を拡大するには、需要を定着させる提案が鍵となる。

農水省によると、1~3月の輸出金額は前年同期比37%増の19億6003万円、輸出量は同37%増の7686トン。伸びが大きいのが、日本にとって上位の輸出先となる米国向けで、金額・数量ともに2倍以上となる。カナダ向けも同4、5倍に急拡大し、米国産から日本産に切り替える動きがある。

背景には、米国などジャポニカ米の主産地が干ばつの影響を受け、22年産の出回りが激減していることがある。米国農務省によると、22年産の米国の中・短粒種の生産量は前年比3割減の146万トン。主産地のカリフォルニア産の減少幅が大きく、同州産の5月の取引価格は平年比で6割程度高い。

店頭価格も米国産米は高騰している。日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、22年12月~23年3月の米国主要都市の店頭価格は、米国産が1キロ当たり3・4~6・0ドル(470~840円)、日本産米が4・0~5・3ドル(560~740円)。かつては大きかった価格差が縮小しているだけでなく、米国産米が日本産米を上回るケースもある。

海外産米の高騰で日本産米の引き合いは強く、「北米や欧州向けに新たな取引が増えている」(日本の大手米卸)。

カリフォルニア州の23年産の生産量は回復が見込まれるが、現地の生産コスト高で流通価格がすぐに下がる可能性は低いという。日本産には価格差の縮小が好機となるが、外国産の作柄や為替に頼るだけでなく、需要の定着を図ることが重要とする見方が出ている。

全日本コメ・コメ関連食品輸出促進協議会は米国向けについて、需要が見込める飲食店や、電子商取引(EC)サイトといった小売りなど、現地ニーズに即した販売提案を進める方針だ。 鈴木雄太

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