ムラサキ守りたい 伝統の栽培、染色再び 島根の同好会

ムラサキの苗の生育を確認する岩田代表(島根県雲南市で)

【島根】島根県雲南市民谷地区の城垣野紫草(むらさき)同好会は、古代から地域に伝わる植物で、貴重な紫の染材に使われる絶滅危惧種「ムラサキ」の栽培と染色作業の保全に力を入れる。染色シーズンを迎え、今年の出来を確認。染め上げた布は、深みのある紫色に仕上がった。

ムラサキは「紫根」と呼ばれる根の部分をもみ上げ、染料を抽出する。同好会メンバーら10人は5月中旬、昨年収穫した紫根を使い染色作業に励んだ。ムラサキ特有の色合いに染まった布の出来栄えに、メンバーらは手応えを得ていた。

ムラサキは「紫草」の名で、古事記などと同年代の古代文献、出雲國風土記に登場する。「城垣野。郡家の正南一十二里なり。紫草あり」の記述があり「城垣野」は同好会の地元・民谷地区と、隣接する宇山地区をまたぐ山林とされる。

古代から珍重されながら途絶えた紫根を「城垣野ブランド」として再興させようと、同会は、全国的にも極めて希少なムラサキの生産技術を確立した同市加茂町の舟木清さんから種子を譲り受け、2018年から試験栽培を始めた。

ムラサキは西日や虫に弱く、雨で跳ね上がる土が付くだけで枯れるなど栽培が難しい課題がある。苗作りから試行錯誤を重ね、6年目を迎えた今年は1・5アールに作付ける。

同会代表の岩田隆福さん(79)は「栽培にめどが立った。今後は販路開拓に力を入れたい」と期待を寄せる。

© 株式会社日本農業新聞