伝統が薫る頂上モデル アストンマーティン「DBS」

現行のアストンマーティンのラインアップを俯瞰したとき、ゴルファーズエクスプレスとして最適な一台は言わずもがなの「DBX」だろう。だがアストンのハウススタイルといえば2ドアのGTモデルだ。現代のプロダクション・アストンの最高峰といえば「DBS」がそれにあたる。

3代目となる現行モデルは2ドア、2+2シーターで、スタイリングはひと目でアストンとわかる、どう猛なフロントマスクと引き締まったボディで構成されている。だがDBSをフラッグシップモデルと定義する根拠は、今となっては貴重な存在となったV12ツインターボエンジンにあるといっていい。

最高出力はスタンダードのDBSでも725ps。さらに今年1月に発表され、限定499台が即完売したという「DBS770アルティメット」は、車名の通り770psの最高出力と精確な8速パドルシフトATで操るという図抜けた動力性能を持つ。

0-100km/h加速は3.4秒(クーペ)で、最高速は340km/hにも達する。例えサーキットであっても、これほどの性能を試すステージは限られるが、頂上クラスのスポーツカーブランドとしての貫禄が、圧倒的なスペックを必要としたのだ。

今回の主役であるDBSに乗り込んでみると“超”がつく高級車の内装の仕立てに息をのむ。伝統的な英国車の内装といえば銘木と上質な革のコンビネーションが有名だが、銘木はF1マシーンを彷彿とさせるカーボン素材に置き換えられていた。

ダッシュパネルの中央に据えられたクリスタル製のスターターボタンを押せば、V12エンジンがどう猛な雄叫びを上げる。だが実際の走りは、パワーの出方も乗り心地も「なめらか」という一言に集約されており、軽く300km/hオーバーに達するポテンシャルはほとんど匂わなかった。

イタリアの赤いライバルと比べた場合の個性は、あえてパフォーマンスをひけらかさないジェントルな雰囲気にあるだろう。ジェームズ・ボンドがいつも仕立てのいいスーツでアストンをドライブしているのは、それが「一流のブリティッシュネス」を体現するスタイルだからだ。高貴で上品な外観や容姿が、襟付きのシャツで真剣勝負に挑むゴルファーと重なるように見えたのなら、それは偶然ではないのである。

アストンマーティン DBS 車両本体価格: 3940万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 4712 X 全幅 1968 X 全高 1280 mm
  • ホイールベース | 2805 mm
  • 車両重量 | 1693 kg
  • エンジン | V型12気筒 ツインターボ
  • 排気量 | 5204 cc
  • 変速機 | 電子制御8速 AT
  • 最高出力 | 725 ps(533 kW) / 6500 rpm
  • 最大トルク | 900 N・m / 1800 - 5000 rpm

Text : Takuo Yoshida

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