【管理栄養士が解説】寝る前に豆乳を飲むと睡眠の質が高まるって本当?

最近、「睡眠の質を高める」と謳う機能性食品が注目を集めています。通常の食品の中でも睡眠に良いとされるものがメディアで度々取り上げられていますが、豆乳がピックアップされているのをしばしば見かけます。その中に「寝る前に豆乳を飲むと睡眠の質が高まる」という噂がありますが、果たして本当なのでしょうか?

今回は豆乳と睡眠に関して、最新のエビデンスに基づき解説していきます。

あの噂の真相はいかに!?

「寝る前に豆乳を飲むと睡眠の質が高まる」という噂の真相を突き止めるべく、豆乳と睡眠の質の関係について調べた研究があるかどうかを調べてみました。

結論から言うと、現時点では残念ながら「豆乳が睡眠の質を高める」という科学的根拠(エビデンス)があるとは言えないことが明らかになりました。これは「効果がない」という意味ではありません。これまでに、豆乳の摂取量や摂取タイミングと睡眠の質との関連を調べた研究がほとんど行われておらず「効果があるかどうかは分からない」ということを表しています。

では、「豆乳が睡眠に良い」の噂はなぜ生まれたの?

豆乳が睡眠に良いという話がされているのは、豆乳に「トリプトファン」というアミノ酸が含まれているからではないかと考えています[1]。

トリプトファンは体内で睡眠ホルモン「メラトニン」に代謝される物質のこと。トリプトファン(L-トリプトファンや 5-ヒドロキシトリプトファン)含むサプリメントは睡眠補助薬として研究されています。ただし、これらのサプリメントに関しても睡眠への効果はまだはっきりしていない状況です [2]。

豆乳に含まれるトリプトファンが睡眠に対してどのような影響があるのかも現時点では不明なため、今後研究が行われることを期待するしかありません。

更年期の睡眠障害の予防に大豆イソフラボンが貢献するかも?

関連する研究論文を調べていると、更年期症状の1つとして現れる睡眠障害と大豆イソフラボンの関係を調べた研究がいくつか行われていました。大豆イソフラボンは、主に大豆の胚芽に多く含まれるフラボノイドの一種であり、豆乳をはじめとした大豆製品に含まれています[3]。中国で行われた研究では大豆イソフラボンを多くとる習慣がある人の方が睡眠に関する更年期症状が出るリスクが低いことが報告されています[4]。

豆乳を飲むなら寝る前は避けた方がよさそう

就寝に近い時間の夕食や夜食は、消化活動が睡眠を妨げるので出来るだけ控えた方が良いと言われています[5]。よって、豆乳に限らず飲食のタイミングは寝る前ではない方が良さそうです。

快眠のためには、規則正しい生活習慣が重要とされています。加えて、夕方から夜(就寝の3時間くらい前)の運動や就寝の2~3時間前の入浴も効果的ですので、睡眠に関してお悩みがある方は、食事だけでなく生活習慣全般を見直してみましょう[5]。

豆乳と睡眠の関係の真相は謎に満ちた状態ではありますが、豆乳は様々な栄養素や機能性食品が含まれている栄養価が高い食品であることには変わりありません。毎日の食生活の中に上手に取り入れて、健康に役立てていきましょう。

参考文献:
[1] 文部科学省, 日本食品標準成分表2020年版(八訂), 豆類/だいず/[その他]/豆乳/豆乳
https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=4_04052_7&MODE=1
[2] 厚生労働省, 「統合医療」情報発信サイト, 睡眠障害
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c05/20.html
[3] 内閣府食品安全委員会, 大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A
https://www.fsc.go.jp/sonota/daizu_isoflavone.html#4
[4] Cao Y, Taylor AW, Zhen S, Adams R, Appleton S, Shi Z. Soy Isoflavone Intake and Sleep Parameters over 5 Years among Chinese Adults: Longitudinal Analysis from the Jiangsu Nutrition Study. J Acad Nutr Diet. 2017 Apr;117(4):536-544.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2212267216312989?via%3Dihub
[5] 厚生労働省, e-ヘルスネット, 快眠と生活習慣
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html


なお、豆乳マイスター通信は、管理栄養士の藤橋ひとみさんにご担当いただいています。

プロフィール

株式会社フードアンドヘルスラボ 代表取締役、管理栄養士。
大手食品メーカー開発職、ベンチャー企業での勤務を経て、フリーランスの管理栄養士として独立。商品開発コンサルティング、レシピ開発、コラム執筆、メディア出演など幅広く活動中。同時に、東京大学大学院にて医学博士取得に向けて栄養疫学研究を行っている。豆腐好きが高じて、さらに知識を極めるべく、大豆関連資格の制覇に挑戦中。管理栄養士の知識を活かしながら、大豆製品の魅力を発信している。

【所有資格】
管理栄養士、栄養士、調理師、製菓衛生師、
豆乳マイスター”プロ”、豆腐マイスター、食育豆腐インストラクター、
いなり寿司マイスター、おから再活プロデューサー、
ソイオイルマイスタープロ、納豆真打、みそまるマスター、
インナービューティープランナー、ほか

【ホームページ】
https://is-food-health-labo.com/

(2023年5月31日 豆乳あるあるマップ掲載記事より)

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