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日本を代表するお弁当と言えば「のり弁」。古くから家庭で馴染み深い弁当の一つとして知られており、弁当専門店はもちろん、コンビニやスーパーでも「コストパフォーマンスの良さ」筆頭の弁当として根強い人気があります。
他方、ここ数年で、このシンプルな「のり弁」にあえて高級食材を使い、その味をかなり飛躍させた「高級のり弁」を打ち出す店が出始めました。
その価格はおおむね1000円超え。
なかなか手を出しにくい価格帯ではありますが、その味はそれまで慣れ親しんだ庶民的な「のり弁」をはるかに飛躍させたものとあり、一時ブームになり、その支持はもはやジャンルとして定着したようにも映ります。
今回は、そんな「高級のり弁」専門ブランドの中から、『海苔弁いちのや』『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』『築地魚弁』の3つに絞り、それぞれを食べ比べてみることにしました。
「のり弁」ブームを飛躍させた『海苔弁いちのや』
東京・九段の靖国神社前に本店を構える『海苔弁いちのや』。
「高級のり弁」専門店としては後発ながら、ブームを飛躍させたブランドです。今回は、この『海苔弁いちのや』の「海苔弁」をいただきます。
フタを開けると、その裏面に食材のこだわりがビッシリ書かれており、この弁当にかける思いが強く伝わってきました。
また、その弁当は主人公の「のり」が隠れて見えないほどに具材で埋め尽くされており、そのビジュアルにも衝撃を受けました。
さっそくいただきましたが、サックリ揚がった魚のフライ、ドーンと大きなちくわの磯部揚げ、鶏もも肉の味噌焼き、きんぴらごぼうや野沢菜など、どれを取っても絶品揃いで、弁当としてはもちろん、このままお酒のおつまみとしても十分すぎるボリューム感でした。
このモリモリの具材の下には、全面を覆い尽くす大判の海苔、その下に白米ともち麦のブレンド米、さらに容器の底にももう一枚、海苔が敷いてありました。
この海苔は、瀬戸内海産「うき流し」を使用しているそうで、しっかりとした食感で、塩味がほどよく白ごはんによく合い、口いっぱいに贅沢な味が広がりました。
「高級のり弁」のカテゴリーではありますが、これだけの充実ぶりで、1080円というのはむしろ安いのではないかと思えるほど。
気取らずにいただけ、そして絶品の「のり弁」でもあるように思いました。
海苔弁いちのや
「高級のり弁」ブーム仕掛け役?『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』
続いていただくのは、ブームの仕掛け役とも言われ、いち早くその弁当開発に乗り出した『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』の「海苔弁<山>」をいただきます。
このブランドは2017年4月にGINZA SIXに第一号店をオープンし、エキュート東京、新橋駅、築地直売所、上野など都内で展開中で、弁当に使う食材の中でも特に「海苔」へのこだわりは、群を抜いていると評価が高いです。
その海苔は、「のり弁用」として考案された海苔有明海で収穫されたその年の一番摘み(新芽)を使用しているのだそう。
この新芽は、自然に青のりが付着した天然海苔の「青混ぜ」という海苔で、1年のうちにわずかな期間しか生産されず、海苔全体の1%しか取れないというとても貴重なものだと言います。
さっそくいただきましたが、まず前述の「こだわりの海苔」が最高です。
「のり弁」というと、箸でつまんだ際、キレが悪く海苔全体が持ち上がってしまうことがよくありますが、『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』の海苔はさすがハイレベルのものを使っているだけあり、海苔が綺麗にほぐれてご飯と一緒に自然と持ち上がってくれます。
そのパラっとしたご飯も最高で、これはササニシキを採用しているとのこと。そこにかけられた粉末状の鰹節が旨みを品良くアップさせており、かなりのハイレベルの味わいでした。
具材の大きなチキン、トロトロの煮卵、ほうれん草のナムルなども、それぞれかなり美味しいのですが、それにも勝る海苔、ご飯、鰹節の贅沢な味わい。
「高級のり弁」を語る上では絶対に口にすべき一品で、1250円という高価格ですが、食べる価値は十分あると思いました。
刷毛じょうゆ 海苔弁山登り
魚への本気度が違う!『築地魚弁』
そして、最後に『築地魚弁』の「海苔弁当(ハラミ白醤油焼)」をいただきます。税込1480円と、今回食べ比べた3ブランドの中では最も高額となる「高級のり弁」です。
『築地魚弁』は大正14年創業の老舗で、「旨い魚」と「旨いめし」をテーマに、「どこよりも美味しい焼魚弁当」を提供したいという思いで開業したと言われています。
もちろん、海苔にもこだわりがあり、他のブランドにも負けず劣らずの味わいなのだとか。さっそくいただいてみましょう。
まず嬉しいのが、「おかず」と「のり弁」が別体になっているところ。それぞれの素材を、混在させることなく個々に味わってほしいという『築地魚弁』の思いが感じられます。
海苔は他ブランドよりも厚めのもので、このためご飯に対する海苔のインパクトが強く、より贅沢な風味が口いっぱいに広がりました。
また、もう一つの主役の焼魚・ハラミ白醤油焼きのクオリティがとにかく高く、脂乗りが素晴らしく、白醤油によって、旨みも十分引き出されているように感じました。
この他、厚焼玉子、煮物、ひじきの当座煮、タケノコの山椒煮、さくら大根と、バランスよく盛られており、インパクトや食べ応えというよりも、かなり贅沢な素材を一つの弁当に詰め込んだ印象を受けました。
「高級のり弁」という概念で言うと、最もストイックな印象を受けましたが、本物の味わいを求める食通の人には特にオススメのように思いました。
築地魚弁
一口に「高級のり弁」と言っても、ブランドごとに個性・優位性がまるで違った!
ここまで3ブランドの「高級のり弁」をいただきましたが、どのブランドの弁当もかなり美味しく、感動することの連続でした。一方、その個性はそれぞれ異なるようにも思いました。
ボリューム満点、コストパフォーマンスの良い「高級のり弁」を求める人なら『海苔弁いちのや』が一番オススメです。
また、「海苔のおいしさ」「ご飯のおいしさ」を楽しみたい人なら『刷毛じょうゆ 海苔弁山登り』が一番オススメです。さらに、海苔は含めた、「海の具材」全てのハイレベルの味わいを求める人なら『築地魚弁』がオススメです。
このように、一見同じようにも映る「高級のり弁」ですが、ブランドごとに個性・味わいが異なるため、好み次第で選んでみると良いようにも思いました。
ここまで読んでくださったあなたはどの「高級のり弁」が気になりましたでしょうか。ぜひあなた好みの「高級のり弁」を見つけて、その味わいを存分に楽しんでくださいね。
(うまいめし/ 松田 義人(deco))