トルコ大統領選の決選投票が行われ、実質的に約20年間も政権を担当する現職のエルドアン氏が、小差で野党統一候補を下し、当選した。
高インフレに加え、2月に起きた大地震による甚大な被害で、強い逆風にさらされていた。前評判では劣勢との見方もあった。
野党候補が、民主主義や自由の重要性を訴えたのに対し、インフラ整備などこれまでの実績と経済の改善などを訴え、ようやく過半数の支持を得た。
国民は、今しばらく現政権を継続させる道を選んだといえよう。
一方で、国際社会はどう受け止めたのか。当選が決まると、親交のあるロシア、中国だけでなく、ウクライナや米国など各国の首脳が祝意を伝えた。
トルコは欧米の北大西洋条約機構(NATO)に加盟しながら、ウクライナに侵攻したロシアに対する制裁の動きとは、一線を画している。
また、両国の和平の仲介に努めるとともに、国連と協力してウクライナからの穀物輸出に関する各国の合意を成立させた。
こうした国際社会での独特の振る舞いが、同氏のもとで維持される見通しである。今後も、その動向から目を離せなくなる。
同氏は、イスタンブール市長を務めた後、親イスラム政党を結成して党首となり、2003年に首相に就任した。
大統領職は議院内閣制時代から数えて3期目で、任期は5年。
これまでの選挙や、憲法改正の国民投票で連勝し、実権型大統領制への移行にも成功した。
強権政治がさらに強まり、長期政権の弊害が出てこないか、大いに心配されよう。
少数民族クルド人らの非合法武装組織と対立し、民族主義を前面に打ち出す。武装組織を支援しているとして、スウェーデンのNATO加盟を認めていない。
女性や少数者の権利、表現の自由には寛容ではない。このため欧米などでは、外交と人権問題の両面で同氏への警戒感が募っている。
今回の大統領選では、反政府テロの脅威をあおるかたちで、支持基盤である保守層を固めたのが勝因とされる。
このままでは民主化を求める国民との隔たりや社会の分断が、深刻となりはしないか。
対立候補との支持率の差は約4ポイントしかなかった。これをしっかり受け止め、穏健な政治を進めてもらいたい。