高齢ドライバーの事故を防ぐ 宮城県警が高齢運転者等支援室を新設し相談体制を強化

運転免許を持つ人の4分の1を占める、高齢者の自動車運転についてです。高齢者による自動車事故の割合が過去最高となる中、宮城県警は4月、高齢者ドライバーの事故防止を目指して新たな部署を発足させ、相談体制を強化しています。

5月16日、塩釜市の店舗に軽乗用車が突っ込む事故が起きました。
運転していたのは70代の女性。警察の調べに対し「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と話しました。店は定休日でけが人はいませんでしたが、一歩間違えば大惨事になっていました。

宮城県警によると、2022年1年間に発生した65歳以上の高齢ドライバーの交通事故は1076件で、全体の26%を占めます。全体の件数が減少する中、高齢者の割合は右肩上がりで増えています。

加齢に伴う身体機能の低下を自覚してもらうため、70歳以上の高齢者が免許を更新する際は自動車学校などで高齢者講習を受けなければなりません。更に、75歳以上は認知機能検査を受けることも必須となります。

自動車学校の高齢者講習

この日講習に訪れた渡部俊吉さん、85歳です。免許を取って60年ほどになります。
渡部俊吉さん「常に気を付けていますよ。免許っていうのはね、生活に直結してますよね」
高齢者講習では、座学講義のほか実際に運転しての講習も行い、運転技能に衰えなどがないか確認します。

日頃から安全運転を心掛けていると話す渡部さん。運転実技に問題はありませんでしたが、講習を受けて決意を新たにしました。
渡部俊吉さん「停止線。余計なところに停めない。きちんとここで止める。まず、スピード出さない、車間距離が空いていても」

こちらの自動車学校では週に3回、高齢者講習を行っています。免許の更新を希望する高齢者が多く、約1カ月先まで予約が埋まっているということです。
仙台自動車学校千葉達哉校長「特に75歳以上がほぼ満杯の状態です。75歳以上になると、最高齢80代、90代の人も来ますので人数が多いんですね、それだけ高齢者が増えてきているという状況でしょうかね」

多くの高齢者にとって、運転免許は生活していくために欠かせないものとなっています。
受講者「クリニックに行くために必要。1カ所じゃないから。何カ所も行くから、どうしても車がないと不便です」「私の足です。買い物するにもちょっと自分でどこかに自由に出掛けていけるのも、そんな遠くまで行かないけども」

こうした高齢ドライバーの増加を受け、宮城県警は4月、仙台市泉区の運転免許センターに高齢運転者等支援室を開設しました。
目指すのは高齢ドライバーの事故防止。運転に関する不安などについて、本人やその家族などから相談を受け付けます。

宮城県警の高齢運転者等支援室

支援室を訪れた仙台市の86歳の男性。地域の人から男性の運転が心配との声が寄せられたこともあり、地域包括支援センターの職員とともに2度目の相談に訪れました。
支援室は医療機関と連携していて、この男性が認知症であることを把握していました。そのため、男性に運転をあきらめるよう説明しなくてはなりませんでした。
県警担当者と高齢男性
「病院からね、病気に関してお話があったんですよ。何て書いてます?」
「アルツハイマー型認知症」
「うんそうそう」

道路交通法の規定で、認知症と医師に診断されると免許は取り消しとなります。支援室の担当者は、男性に強制的に取り消される前に公共交通機関の割引などメリットの多い免許の自主返納をするよう勧めました。
しかし男性は、免許を失うことに納得がいきません。
高齢男性「いくら医者といえどもね、人の生活をね、そうしたら、先生が私のところへ毎日お昼のものを持ってきたりできるんですか。今まででもね、無事故でやって来てるんですよ」

免許を返納をする人の数は東京・池袋で高齢ドライバーの暴走事故があった2019年をピークに減少に転じています。コロナ渦で、密にならない移動手段として支持された影響も考えられます。
この男性は一人暮らしで、親族と疎遠ということもあり車を失った後の生活を心配します。
宮城県警と地域包括支援センター担当者
「不安になられている、免許がね無くなってしまった後の買い物とかの部分って、何かフォローする施策ってあるんですか」
「生協さんとかでね、宅配のサービスとかがあったりするのでね、そういうの使ってらっしゃる方もいらっしゃいますね」

結局この日は結論は出ず、担当者は2週間後の面談までに免許の返納を決心してもらうよう説明しました。
宮城県警高齢運転者等支援室高橋充室長「自分がどういう低下しているレベルにあるのかというのは、なかなか判断しきれないのかなと思いますので、おじいちゃん、おばあちゃんの運転が怖いです、とかですね、そういうことを感じるようでしたら、気軽に相談していただいて、取り返しのつかない事故が起きないようにしていただければという風に思います」

小笠原侑希記者
「多くの人は免許返納後の生活に不安を抱えているので、家族のサポートや自治体が提供する支援が不可欠だと感じました。宮城県警は、運転に不安を感じる高齢ドライバーやその家族には、まず電話で相談して欲しいと話しています。
電話番号は、#8080です」

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