「足の短いお爺」から贈り物 かほく・宇ノ気小、中に匿名寄付610万円

  ●遊具や電子黒板、部活道具に

 かほく市宇ノ気小と宇ノ気中に、卒業生とみられる匿名の人から、それぞれ310万円、300万円の善意が寄せられたことが31日までに分かった。現金入りの茶封筒の中の手紙には「生徒さんが笑顔になるような事に使って下さい」とあり、贈り主の名は「あしながおじさん」ならぬ「足の短いお爺(じい)」と記されていた。両校では物価高騰が生活を直撃する中での貴重な寄付に驚きながら学習用品や大型遊具の購入などに活用し、児童生徒の励みとなっている。

  ●郵便受けに札束 「詮索無用。笑顔になる事に使って」

 かほく市教委などによると、寄付があったのは昨年2月末。両校の郵便受けに「校長先生へ」と宛名書きされた茶封筒が入れられ、中に帯封の付いた1万円札の束が入っていた。文面や筆跡から同じ人物とみられる。それぞれに小学生、中学生時代にお世話になりましたと感謝がつづられ、いずれも「私が長い間、働いて得たお金の一部」「私のことは詮索無用です」と書かれていた。

 当時、宇ノ気中の校長を務めていた市教委の井上勝文さん(60)は「見つけた時は、本が入ってるのかと思った。現金が出てきた時には、職員室にいた全員がびっくりした」と振り返る。

 現金は遺失物として津幡署に3カ月間保管されるなどした後、所有権が移った両校の教員が市教委と意見を出し合って活用法を決めた。2通の手紙ともに「例えば費用面で修学旅行に参加できない生徒さんがいたら利用してあげて下さい」と記されていたが、特定の子どもの支援よりも、児童・生徒全体の教育環境の充実に生かすことにした。

 宇ノ気小は、今年3月に校庭のブランコを新調した。宇ノ気中では、電子黒板やバレーボール用ネットなどの備品の購入に充てた。教諭らは「古くなっていた備品を新調することができ、子どもたちの学習に有効活用させていただいた」と口々に感謝している。

  ●校長「感謝尽きない」

 新しくなったブランコで遊ぶのが好きだという宇ノ気小5年生の中野李音さんは「前のものよりカラフルで、とっても乗りやすい。昼休みには、みんなで順番待ちになります」と笑顔を見せた。

 同校の笹山明夫校長(59)は「児童も楽しく使っており、笑顔と元気をいただいている。感謝の思いが尽きません」と話した。

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