短頭種犬の飼い主は呼吸障害を認識していない傾向があるという調査結果

短頭種犬のブヒブヒ音やイビキは犬種の特徴?

フレンチブルドッグやパグなど短頭種の犬は、ブヒブヒと鼻を鳴らしたりイビキをかいたりすることが知られています。

これらは短頭種の犬には普通の特徴であるとか、愛嬌があってかわいらしいとさえ思われがちですが、実際には極端な頭部の形状のため、正常な呼吸ができないことを示しています。

短頭種の犬の呼吸障害には、呼吸困難、運動不耐性、上気道雑音、虚脱(失神を伴わない急激な脱力)など色々な症状があり、『短頭種気道症候群』と呼ばれます。

これらの症状が上記のように「普通のこと」と捉えられているとしたら、犬の福祉を大きく損なうことにつながります。

イギリスの王立獣医科大学の研究チームは、犬の飼い主を対象に愛犬の呼吸症状に関するアンケート調査を実施し、呼吸障害を持つ犬の飼い主の認識に警鐘を鳴らしました。

実際に起きている呼吸障害の症状と飼い主の認識のギャップ

調査対象となったのは、ある動物病院で診察を受けた68犬種285頭の犬の飼い主です。この人々に5ヵ月間にわたって、愛犬の呼吸音の特徴や呼吸困難の頻度を記録し報告してもらいました。

飼い主は愛犬が現在呼吸困難を抱えているか、あるいは過去に呼吸困難の症状があったかといった情報も報告しました。

飼い主からの報告と受診記録(頭蓋骨の形態や鼻腔が狭くなっているかどうか等)に基づき、285頭のうち31頭が短頭種気道症候群であると分類されました。

しかしこの31頭の飼い主の58%は「愛犬は呼吸に問題がない」と回答していました。31頭は頻繁に重篤な症状が起こっていたことが窺えたのですが、飼い主は問題がないと認識していたという、大きなギャップが明らかになりました。

犬の病気や苦痛を「普通のこと」として捉える危険

短頭種の犬が経験する健康上の問題を、「この犬種の特徴」「この犬種では普通」と考えることは、犬が感じている不快感や苦痛を正常なこととしてしまう問題につながります。

研究者は特に「獣医師はこのようなラベル付けに注意する必要があり、短頭種についてはむしろ”苦痛のリスクが高い”というラベルを付ける方が良い」と述べています。

短頭種気道症候群は、「呼吸をする」という生命維持の基本が損なわれているという大きな問題です。飼い主がこの点を理解していないと、適切な診断や治療を受けることができず、犬は長期的(最悪の場合は生涯にわたって)苦しむことになります。

呼吸障害にそれぞれの犬が苦しむ問題はもちろんのこと、短頭種気道症候群につながる身体的特徴を持つ犬が繁殖に選ばれ続けることで、呼吸障害が何世代にもわたって続く可能性も低くありません。

まとめ

イギリスでの調査から、犬が短頭種気道症候群の症状を示しているにも関わらず、半数以上の飼い主が「愛犬には呼吸の問題はない」と認識していたという結果をご紹介しました。

この研究では短頭種犬の呼吸に焦点が当てられていますが、極端な体型に選択育種された犬種に特有の疾患や障害は数多くあります。見た目の可愛らしさのためだけに育種した結果の、関節疾患から来る座り方を「可愛い」とする風潮はその一例です。

人間が見た目のためだけに作り出した外見のために犬や猫が苦しんでいることを知ることは、苦痛を当たり前のこととしてしまわないための第一歩です。

《参考URL》
https://doi.org/10.7120/096272812X13345905673809

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