大分市教委、文化資源のデータベース作成 1500件、ウェブで無料公開【大分県】

「大分市デジタルアーカイブ」を紹介する市教委職員=大分市役所
全体像を閲覧できる「御城下絵図」
ポルトガルから大友宗麟が入手した大砲「国崩し」の3Dモデル

 【大分】大分市教委は、市内の有形・無形文化財や史跡、伝統芸能、景観、美術工芸品など「文化資源」のデジタルデータを一元管理するデータベースを作った。1日からウェブサイトで無料公開する。同様の取り組みは県内自治体では初めてという。貴重な文化資源の継承を図るとともに、学校教育や商品開発など多分野での活用も期待している。

 ウェブサイトの名称は「大分市デジタルアーカイブ~おおいたの記憶~」。昨年8月~今年5月にかけて作成、試験運用した。事業費は約780万円。

 公開日時点では市美術館と市民図書館、市歴史資料館の収蔵品や市指定文化財の高精細画像など計約1500件が閲覧可能。フリーワード検索のほか、地域や時代、所蔵施設など目的別にデータを探せる。

 主なコンテンツは▽美術館などの展示と連動した「デジタル企画展」▽明治から昭和までと現代の風景を写真で見比べる「大分の今昔」▽文化財の3D(3次元)モデルを360度自由な視点で閲覧できる「3Dミュージアム」―など。

 「御城下絵図の世界」では、「浜の市」のにぎわいなどを描いた長さ30メートルに及ぶ絵巻物「御城下絵図」(市指定有形文化財)の全体画像を高画質で掲載。人々の表情まではっきりと観察でき、江戸時代中期の大分の生活や風俗がうかがえる。市教委文化財課は「実物を全て広げて展示するのは難しく、デジタルならではのコンテンツ」とPRする。

 文化資源を巡っては、全国的に、担い手不足や災害・土地開発などで継承が難しくなったり、失われたりする事例が少なくない。文化庁は従来の「保存」に加え、観光や地域の振興に向けた「活用」を自治体などに促している。市教委はデジタルアーカイブの一部をオープンデータとして公開。営利・非営利を問わず申請なしでの利用を認める。

 今後、動画や音声などのデータも登録していく。本年度は国の補助金を活用し、3Dモデルの充実に力を入れるという。同課の串間聖剛主査(41)は「現状で価値が定まらないものでも、意識して残していけば、歴史的な記録になるかもしれない。アーカイブを通し、文化資源への関心が高まればうれしい」と話した。

 問い合わせは市教委文化財課(097.537.5682)。

<メモ>

 大分市教委によると、市内の指定や選択、登録の文化財は224件(1月1日時点)ある。内訳は▽国指定など64件▽県指定など77件▽市指定など83件。

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