DENIM HOSTEL float ~ 瀬戸内海の絶景を眺める、「いいもの」が詰まったカフェ&ホステル

ITONAMI(いとなみ)の「デニム兄弟」を知っていますか?

経済誌『Forbes』の「アジアを代表する30歳未満の若者30人」に選ばれ、『ガイアの夜明け』で特集が組まれるなど、国内外から注目を集めている兄弟です。

47都道府県をめぐり、全国のつくり手に出会う旅をしてきたデニム兄弟の新拠点となるのが、「DENIM HOSTEL float」。

2019年9月下旬、倉敷市児島地区にOPENした、瀬戸大橋の見えるホステルです。

「くらとこ」メンバーをはじめ、著者の周りには「floatファン」がいっぱい!

絶景が見えて、あたたかくて、人に語りたくなるようなものに出会える、魅力が盛りだくさんな「DENIM HOSTEL float」を紹介します。

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ITONAMIの「デニム兄弟」はこんな人

左から、スタッフの松田彩花さん、池上慶行さん、山脇耀平さん、島田舜介さん(創業当時のメンバー)

「ITONAMI」は、兄・山脇耀平やまわき ようへい)さんと弟・島田舜介(しまだ しゅんすけ)さんの、実の兄弟によるデニムブランドです。

はじめは「EVERY DENIM」の名で活動。

3年間は店舗を持たず、全国各地で販売会をおこなってきました。

デニム兄弟と旅をしたキャンピングカー「えぶり号」

2018年4月からは、毎月キャンピングカーで日本中を移動し、地域に根ざす衣食住の生産者に会って話を聞き、「心を満たす生産や消費のありかた」を探る旅をしてきたふたり。

自分たちが良いと思えることを発信・実践していて、デニム兄弟の周りには、彼らに共感する人たちがたくさん集まっています。

DENIM HOSTEL floatはレストラン+ホステル+デニムショップ+サウナ

デニム兄弟の新拠点として、2019年9月にオープンした「DENIM HOSTEL float」。

DENIM HOSTEL floatには、おもに4つの顔があります。

  • レストラン
  • ホステル
  • デニムショップ
  • サウナ

瀬戸大橋が望める立地で、砂浜まで徒歩1分!

全国各地のつくり手と出会ってきたデニム兄弟が選ぶ、生産背景が見える「良いもの」と出会える場所でもあるんです。

レストランとホステルについて、紹介します。

瀬戸大橋の見えるレストラン「pile」(パイル)

写真提供:DENIM HOSTEL float

floatの窓の外に広がるのは、穏やかな海と島々が織りなす、瀬戸内の多島美の景色。

海沿いの道から少しだけ坂を登ったところにあるので、道から見るよりさらにきれい!

靴を脱いでスリッパで過ごせるため、子ども連れでも過ごしやすいです。

無料Wi-Fiがあるので、のんびり作業するのもいいのではないでしょうか。

明るい時間だけでなく、夕焼けから日の入り前後の景色も魅力的です。

pileのおすすめメニュー

float内のレストランは、自家製麺のラザニアとナチュラルワイン「pile」。

提供されるのは、信頼できる「作っている人の思いを届けようとしている人」からのものです。

おすすめのフードとドリンクを聞きました。

「豊福牛」と「ガラエビ」を贅沢に味わえるラザニア

ハーフ&ハーフ 1,540円(税込)

pileのラザニアは、生産者の顔が見えることにこだわった、選りすぐりの食材で作られています。

ビーフのラザニアには、勝田郡奈義町(かつたぐんなぎちょう)で作られている独自のブランド牛「豊福牛」を。

シュリンプのラザニアには、倉敷市にある老舗の鮮魚店 魚春(うおはる)から仕入れる、瀬戸内で獲れた「ガラエビ」。

そして小麦には、瀬戸内市長船町(おさふねちょう)にある「一文字うどん」の「ふくほのか」という品種を使っています。

どのメニューも、デニム兄弟やスタッフと生産者との出会いがあって、初めて生まれたもの。

瀬戸内海を眺めながら、こだわりの食材に思いを馳せてみませんか。

ラザニアに合う「ナチュラルワイン」

ナチュラルワイン 800円~(税込)

ナチュラルワインは、ラザニアに合うようイタリア産を中心に用意。

ゆっくりとした時間を過ごしてほしい」との思いで、ランチでも気軽にワインを楽しめるようにしたとのこと。

そのときどきで、仕入れるワインは違うそう。

スタッフのおすすめをたずねてみるのも、旅の楽しみになるはずです。

岩城島レモネード

岩城島レモネード 写真提供:DENIM HOSTEL float

floatのレモネードになっているレモンは、兄弟が岩城島(いわぎじま)で出会った岡さんから購入したもの。

岡さんは、岩城島のレモン農家さんが安心して農業を続けられる環境を作りながら、美味しいレモンを販売しています。

ワックス・防腐剤を使っていないレモンを、皮ごとゆっくりスロージューサーにかけています。

シロップやはちみつも使っていないので、酸味はもちろん、レモンの本来の甘味を感じられるレモネードです。

記事の後半で、もう少し詳しく紹介します。

ていねいに作られた飲みもの

高梁紅茶 写真提供:DENIM HOSTEL float

他にも、こだわりの飲みものがあります。

  • コーヒーは、元住み込みスタッフが立ち上げた「CALMA COFFEE ROASTERS」オリジナルブレンド
  • 紅茶は、和紅茶を広めようと活動している高梁紅茶
  • コーラは、スパイスと柑橘をたっぷり使った自家製クラフトコーラ

コーラ・レモネード・コーヒーはフロートにもできます。

ドリンクに浮かぶアイスが海に浮かぶ島々のよう。

冷たいドリンクには、さとうきびストローが使われています。

続いて、ホステルを紹介しましょう。

デニムがコンセプト 全室オーシャンビューホステル

著者はオープンしてすぐに、旅好きな友人たちと貸切で宿泊しました。

到着時から歓声の嵐。

とても盛り上がりました!

デニムにちなんだ内装

「できるところは自分たちで」と作り上げてきた内装には、随所にデニム素材が使われています。

壁の一部やふすまがデニム生地。

畳縁・クッション・ざぶとん・スリッパもデニムです。

写真提供:DENIM HOSTEL float

レストランでは、倉敷市真備町の竹製家具メーカー「TEORI」(ており)のテーブルやチェア、お盆などを使用。

チェアの座面にもデニムを使用しています。

床材には、西粟倉村(にしあわくらそん)の木が使っているそうです。

和室ほか、トレーラーハウスやグランピングドームも

部屋の名前は、デニムや場所にちなんだ日本の伝統色から名付けられました。

個室の3部屋は最大4名まで、FUNEとKUMOは最大2名までで、上記は素泊まり価格です。

オプションで朝食やディナーを依頼できます。

和室には畳が敷いてあるので、ごろんと転がって過ごせました。

お花や照明もかっこいい。

古い建物をリノベーションしているので、懐かしさとおしゃれさのハイブリッドだなと感じました。

全室オーシャンビューで、朝起きたら美しい景色が広がっているので、とても気持ちよく目覚められました。

FUNE 写真提供:DENIM HOSTEL float
KUMO 写真提供:DENIM HOSTEL float

バス・トイレは共用です。

写真提供:DENIM HOSTEL float

時間予約制のシャワーは、個室ではありません。

1つの浴室に3つシャワーが付いているので、家族で宿泊する際に一緒に使えるのがうれしいポイントです。

極上のタオルやアメニティ

タオルは、理念と品質にファンの多いIKEUCHI ORGANIC(イケウチオーガニック)さんのもの。

オーガニックコットンと風力発電の風で織っている、ふわふわのタオルです。

著者にとっては、ずっと使ってみたかった憧れの品。

実際に使用して、想像以上の心地よさに感動しました。

サウナ・SUP・インディゴ染めもできる

宿泊以外にも、楽しめることがあります。

写真提供:DENIM HOSTEL float

海を見ながら楽しめるサウナ

水着やサウナハットはレンタルできます。

デニム素材で作られた、「ITONAMI」オリジナルのウェアをまとい楽しんでみては。

人の少ない浜辺で、波に揺られるSUPサップスタンドアップパドル)。

開放感と、穏やかなゆらぎが気持ちいい!

優しく乗りかたを教えてもらい、スポーツが苦手な筆者でも楽しめました。

デニムを染めるのに使われるインディゴで服や小物を染める、インディゴ染体験(事前予約)。

気分が変わったり、シミができたりして着られなくなった服も、蘇ります。

下の写真は、持ち主と一緒に世界を1周した、白いワンピース。

きれいな藍色に染まりました。

左から、Tシャツ・ワンピース・パンツがインディゴ染めしたもの

予約方法・料金など詳しくは、floatに問い合わせてください。

どうして、デニム屋さんがfloatをはじめたのでしょうか。

デニム兄弟の兄・山脇耀平(やまわき ようへい)さんと、弟・島田舜介(しまだ しゅんすけ)さん、地域おこし協力隊でfloatスタッフの池上慶行(いけがみ よしゆき)さんに話を聞きました。

floatのスタッフさんにインタビュー

デニム兄弟の兄・山脇耀平さんと、弟・島田舜介さん、地域おこし協力隊でfloatスタッフの池上慶行さんに話を聞きました。

インタビューは2019年10月の初回取材時におこなった内容を掲載しています。

──なぜこの場所に拠点を作ったのでしょうか?

島田──(敬称略)──

2017年から47都道府県をめぐって、産地のなかでものを作ったり商売していたりする人たちと出会ってきました。

本当は産地のなかより、外で売ったほうが目立てるんですよね。

地元のかたがたには馴染みがありすぎて「児島のジーンズだよね、知ってるよ」って見られちゃうので、興味関心が逆に薄いこともあるんです。

でも僕らが旅先で出会った人たちは、自分たちがどういう思いでやっていて、どういうところが他と違うのかを発信しながら、地元の人たちが集まってくる場を作っていて。

それがすごくかっこよく見えたんです。

僕たちも「作っている人の思いを届けたい」と思っているので、産地のなかに場所を構えたいという思いが芽生えてきて

それで、児島に拠点を持つことを決めました。

池上慶行さん

池上(敬称略)──

僕は、児島のなかに若い人が集まれる場所があまりなかったので、地域おこし協力隊として活動するなかで、そういう場所を作りたいと思っていました。

島田────

児島のなかでもこの場所に決めたのは、この景色です。

全国を旅してきたなかでも、とてもいいなと。

とても穏やかで、瀬戸大橋の全貌が見えて、島が浮かんでいて、人の暮らしも見えて。

せっかくなら、わざわざ来てもらえる場所にしたいと思いました。

僕は大学から岡山に来たんですが、同世代の人に「岡山には何もないよ」って言われていました。

でも、いいところがいっぱいあるなと思って。

そのひとつとして、こんないい景色があると、岡山の人に岡山の魅力を知ってもらえたらうれしいなと思います。

左:山脇耀平さん

──なぜ、カフェ・ホステル・デニムショップをオープンさせたのでしょうか?

山脇(敬称略)──

飲食でも宿泊でもデニムの販売も、思いは共通しているんです。

floatでは、携わっている人や生産背景、そのもの自体をちゃんと知ったものを提供しています。

思いがあって生まれた製品を、ゆっくり時間をかけて味わう――飲食や宿泊を通じてその体験を楽しいと感じていただければと。

また、旅でいろいろな人たちに迎え入れてもらって、味わわせてもらいました。
その体験を持ってもらいたいというのもあります。

島田舜介さん

──カフェメニューについて教えてください。岩城島レモネードはどんなものですか?

島田────

瀬戸内海に浮かぶ愛媛県の岩城島は、「青いレモンの島」と呼ばれていて、レモン農家さんがたくさんいらっしゃいます。

ただ、消費者に届くまで間に多くの人が入っていて、農家さんのこと・レモンのことが消費者に直接伝わりません。

「国産レモン」としてまとめられてしまうことも多いんです。

そこに問題意識を持ちながら、レモンの仕入れ・販売をしている岡さんというかたに出会いました。

僕たちも「作っている人の思いを直接伝えたい」という気持ちが強いので、スタンスが似ているなと。

──岡さんから買うからこその特徴はありますか?

島田────

レモン自体もいいですが、岡さんが、レモンのことをめちゃくちゃ教えてくれるのが大きいですね。

今出しているレモレードで使っているのは、昨年の冬の完熟期を超えたレモンです。

まだ出していないんですが、今年(2019年)の早摘みのグリーンレモンも購入しています。

ふだんなんとなく、同じお店のレモネードは同じレモンを使っているようなイメージがありませんか?

お店を始めて、年中同じものは出せないんだなと感じました。

収穫期を考え、季節ごとに違うレモンを使って、そのときどきに適したレモネードを提供したいなと思っています。

たとえばワインでは、僕らがワインのつくり手さん一人ひとりに会いに行くのは、いきなりできることではありません。

信頼できるかた、思いを届けようとされているかたから買わせてもらう、というスタンスを取っています。

──アメニティも、こだわりのものがそろっていますよね。

島田────

一つひとつ、製造現場を見に行って、「この人たちのものを届けたい」と思ったものを使っています。

たとえばタオルは今治(いまばり)で作られているんですけど、「今治タオルですよ」という言いかたはしたくなくて。

産地で良いイメージはあるなかでも、「IKEUCHI ORGANICさんのタオルで、こういう作られかたをしている」というところまで、僕らがしっかり知っていて納得いっているものを出したいなと思っています。

──山脇さんは普段東京にいらっしゃいますが、倉敷に戻ってきたときに感じることはありますか

山脇──

落ち着きが半端じゃないですよ!本当に、海の落ち着きがすごくいいですね。毎回思います。

floatで過ごす時間をゆったりと想像の時間にしてもらえたらうれしいなと思っているんですが、僕自身が体験していますね。

ふだん情報量が多いなかで生活していて、ここにくると落ち着いてものごとを考えられます。

都市部から来たお客様にも、同じように感じてもらえるんじゃないでしょうか。

DENIM HOSTEL floatで、良いものに触れよう

floatの心地よさは、携わっているかたがたの、人とものへの真摯(しんし)な姿勢からきているのだなあと感じました。

アクセスが良い場所ではありませんが、彼らに共鳴した人たちが、全国から次々とfloatを訪れています。

かかわる人や自然環境を考えながら、信念を持ってものを作ったり届けたりしている人たちは、かっこいい。

そして、心から「いいね」と思えるものを使うのは、とても気持ちいい。そう思います。

著者はfloatやその近所を何度も訪れていますが、美しい景色は見飽きることがありません。

穏やかな海を眺めて良いものに触れながら、floatでゆっくり考える時間を過ごしませんか。

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