フジツボ養殖へ前進、実用レベルの種苗生産技術を全国初確立 青森県栽培漁業協会(階上町)

養殖板を使って種苗生産しているミネフジツボを示す松橋専門員=31日、階上町

 漁業者の所得向上につながる新たな養殖品種として、青森県などで1990年代前半から行われてきたミネフジツボの養殖研究に関し、階上町の県栽培漁業振興協会(松下誠四郎代表理事)は31日、実用レベルの種苗生産技術開発に成功したと発表した。餌にプランクトンのケイ藻「タラシオシラ」を用いることが種苗生産の効率化につながると解明した。協会によると、実用レベルの種苗生産に成功したのは全国で初めてといい、関係者は「階上をミネフジツボの種苗供給拠点にしたい」と構想を描く。

 ミネフジツボの養殖を巡っては、八戸学院大学の鶴見浩一郎特任教授(海洋付着生物学)、漁業資材製造・販売の東北総合研究社(八戸市)が共同研究しており、協会と養殖技術の実用化を目指してきた。

 協会などは2013年度から、10種類の植物プランクトンの中でどれがミネフジツボの成育に適しているかを研究。タラシオシラを使ってハナサキガニの養殖に成功した根室市水産研究所(北海道)の協力を得て、22年度までに、タラシオシラが餌として最も有効性が高いと確認した。

 フジツボはエビやカニと同じ甲殻類で、ミネフジツボは高級食材として知られる国内最大のフジツボ。卵からふ化した幼生がプランクトンや浮遊有機物を捕食し、2度の変態を経て外殻を持つ成体になる。成体は直径3~5センチほど。甲殻類特有の甘みと濃厚な磯のうまみが特徴で、珍味として重宝されている。

 養殖に当たっては給餌が不要なため他の魚に比べてコストが低く、資本力のある企業に限らず、沿岸漁業者も副業として行うことができる利点があるという。ただ、安定的な種苗生産が難しく、複数個体がくっついてブロック状になる-などの課題があった。このうち後者については鶴見氏が15年、愛媛大学や北里大学の研究者らと共に、シリコーンを塗った養殖板にフジツボを定着させることで、個体ごとの収穫や付着物の除去を容易にする技術を確立した。今回の種苗生産技術開発により養殖の実用化に大きく前進したという。

 同協会の松橋聡専門員は「種苗生産したフジツボを養殖する技術が確立した場合、階上にある協会施設を種苗供給拠点とすることを考えている」と話す。二木幸彦業務執行理事は「新技術による種苗の実証試験を推進し、養殖技術のさらなる改良につなげられれば」と期待している。

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