永山瑛太が棒読み謝罪をする姿 生徒への暴力を疑われる教師役 「怪物」本編映像

2023年6月2日より劇場公開される、是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二の初タッグ作となる映画「怪物」から、息子の湊(黒川想矢)が担任教師の保利(永山瑛太)から暴力を受けていることを疑ったシングルマザーの早織(安藤サクラ)が、学校へ説明を求めに行くシーンの、本編映像が公開された。

校長室に案内された早織の前にぞろぞろと教師たちが入室。校長の伏見(田中裕子)が担任教師の保利から謝罪をすると切り出し、保利が座ったままか細い声で「え~」と話し始めると、隣に座っていた教頭の正田(角田晃広)がすかさず「立って」と指摘する。保利は立ち上がりボソボソとしたぎこちない口調と釈然としない態度で謝罪を述べ始め、早織に頭を下げる。すると周りの教師陣もタイミングを見計らったかのように一同に立ち上がり、保利とともに頭を下げて謝罪する。

あまりにもその場しのぎの様子が見て取れる学校側の対応に早織は不信感をあらわにするも、校長は「指導が適切に伝わらなかったものと考えております」と回答。早織は校長との対話を諦め、当事者の保利を問い詰めるが、目を見て真摯に問いかける早織に対し、保利はうつむいたままティッシュを取り出して鼻をかみ始める。そんな中、校長はまるで心がこもっていない弁明を繰り返すのだった。シリアスな場面でありながら、役者陣の不自然な言動やしぐさに滑稽ささえ感じられる、脚本の坂元裕二ならではのエッセンスが散りばめられたシーンとなっている。

坂元裕二の脚本の執筆と登場人物のキャスティングは平行して行われた。配役が決定することによって、坂元による脚本のキャラクターがふくらみ、物語がますますクリアになっていく過程を目の当たりにした是枝裕和監督は「こうやって坂元さんは本を固めていくんだな」と感心したという。また自身の脚本と坂元による今回の脚本の違いについて「今回は構造も含めて、非常にしっかりとした物語ですよね。僕が普段書くものは“スライス・オブ・ライフ”なんです。日常を切り取り、描写して、その前後を想像させるようなものが多いから、それはたぶん物語ではない。今回も描写の力で持たせているシーンは多少あるけど、基本的に言えば劇映画だと思います。物語のラインが非常に強くて、太いんじゃないでしょうか」と語っている。

「怪物」は、「万引き家族」などの是枝裕和監督と「花束みたいな恋をした」などの脚本家・坂元裕二がタッグを組んだ作品。よくある子供同士のケンカに見えた出来事。彼らの食い違う主張は次第に大人や社会、メディアを巻き込み、大ごとになっていく。そしてある嵐の朝、子供たちが忽然と姿を消す。音楽を坂本龍一が担当。出演は、安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子らに加え、黒川想矢と柊木陽太が2人の少年を演じる。ほかに、高畑充希、角田晃広、中村獅童らが顔をそろえる。第76回カンヌ国際映画祭では、脚本賞とクィア・パルム賞を受賞した。

【作品情報】
怪物
2023年6月2日(金)、TOHOシネマズ 日比谷 他 全国ロードショー
配給:東宝 ギャガ
©2023「怪物」製作委員会

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