水谷豊 初の自伝を発表へ「こんなに自分の過去を振り返ろうとしたことは一度もなかった」

俳優の水谷豊(70)が自身の半生を初めて語った「水谷豊 自伝」(水谷豊、松田美智子共著)を7月13日、新潮社から発売されることが1日、発表された。

芸歴57年の名優が「こんなに自分の過去を振り返ろうとしたことは一度もなかった」と、出演作の秘話と人生の曲折を明らかにした。「父親が家にいないのが普通」の家庭に育ち、「夜遊びをするよりはマシ」と思った母に許されて芸能界に入ったのは小学6年生のときだった。生い立ちから現在に至るまでの人生の起伏、日常生活や多彩な交友録までをも、あますところなく語り尽くした。

初めての著作刊行へ水谷豊の背中を押したのは、松田美智子が聞き手になるなら、長いあいだ自分が繰り返し自問し続けてきたことの答えが見つかるかもしれないという「淡い期待」だったという。水谷は20代前半の頃、親友である松田優作・美智子さんご夫妻の家をしばしば訪れ、夜中まで話し込んだ間柄。お互いに気を許した仲だからこそ話ははずみ、当初の予定を大きく超え、立ち会った編集者も驚くほどのエピソードや想いが飾らない言葉で明かされた。

水谷による淡々と、ときにウイットを交えて語られる肉声を、松田は旧友の情愛と作家の感性で受け止め、書き留めて本作は共著として刊行されることになった。「細かいところが気になるのが僕の悪い癖」とは『相棒』杉下右京の口癖だが、細かいところに神が宿るのが書籍の世界。読み終えた後に、またあの口癖「最後に一つだけよろしいですか?」「人間、本気になって何かに向かえば、自分でも思わぬことができるようになったりするものですよ」が聞こえてくるかもしれない。水谷は果たして自問し続けてきた答えを見つけることができたのか。

◆水谷豊(みずたに・ゆたか)1952年7月14日生まれ、北海道出身。13歳で劇団ひまわりに入団以降、テレビ、映画、舞台など出演多数。妻は伊藤蘭。女優の趣里は一人娘。

◆松田美智子(まつだ・みちこ)1949年8月7日生まれ、山口県出身。松田優作と一子を設けて離婚。小説作品のほか、『越境 者松田優作』(新潮社)、『サムライ 評伝三船敏郎』(文藝春秋)、『仁義なき戦い 菅原文太伝』(新潮社)など評伝多数。

(よろず~ニュース編集部)

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