ビーサンが腰痛や膝痛の原因に!50代からのケガしない「サンダル」の選び方

(写真:PIXTA)

「東京都生活文化局の調査では、転倒リスクが高い履物ランキングでサンダルが1位でした。サンダルを履いて玄関先で転んでしまい、大ケガにつながるケースも少なくないようです。他界した私の母も、70代のころにサンダルで出かけようとしたところ、玄関先で尻もちをついて大腿骨頸部を骨折。その後、急激に体が衰えてしまいました」

こう話すのは、岩手県奥州市の靴専門店「かんのシューズ」を20年以上経営し、全国でも数少ない靴専門知識最上級者の「マスターシューフィッター」の資格をもつ管野博久さん。そんな“靴合わせのスペシャリスト”の管野さんによれば、転倒以外にもサンダルが原因で、体の不調やケガが引き起こされることがあるという。

「脱ぎ履きがラクなものほど、安定性が低く、歩くときに姿勢を維持しづらいんです。そのため、股関節への負担が大きくなり、それが腰痛や膝痛につながります」(管野さん、以下同)

サンダルを履き慣れているという中高年の女性こそ気を付ける必要があるという。

「女性はホルモンバランスが変化する50代から、徐々に土踏まずが潰れてきます。さらに加齢によって足首が硬くなり、動かしにくくなりますし、靭帯などがたるんで外反母趾にもなりやすいんです。閉経などの関係で、男性より女性のほうが10年ほど早く足のトラブルが始まります。その点でも、50代以降のサンダル選びはとても重要です」

そこで、正しいサンダルの選び方と、痛みやケガが起こる原因を管野さんに解説してもらった。

「人が歩くときは、まずかかとから着地し、足裏を転がすように体重を乗せて重心を移し、親指のあたりをぐっと曲げ、地面を蹴り出して前に進みます。この動きを阻害しないように、かかと・甲・つま先を支えるサンダルを選ぶようにしましょう。靴業界では、これを『3部位支持』と呼びます」

かかとがしっかりフィットし、甲まわりや蹴り出しの親指部分がストラップなどで押さえられ、甲に隙間ができないように固定できることがポイントだ。

「そのほか、つま先がやや上がっていて、靴底が少し丸みを帯びているタイプもよいですね。体重移動をサポートする働きがあるので、50代以降の女性でもラクに歩けます。このタイプはスポーツサンダルなどで最近よく見かけます」

では、反対に履くのを避けたいのはどんなサンダルだろうか。

「タイプ(1)のようにソール部分(靴底)が薄いものはおすすめしません。長時間着用すれば、土踏まずを支える筋肉が引き伸ばされ、足裏が痛くなる『足底腱膜炎』になる恐れがあります」

近年定番として人気になっている、軽い合成樹脂でできたタイプも危険だそう。

「タイプ(2)のサンダルは甲まわりをきちんと押さえられません。そのため、3部位支持にならず、姿勢を正しく維持できないんです。その結果、土踏まずが潰れてしまい、足が自然と内側に傾くことで骨盤がずれ、股関節への負担が大きくなってしまいます」

誤った姿勢のまま履き続ければ、腰痛の原因にもなってしまう。

「骨盤が前傾すると、反り腰になって、腰椎や腰からお尻にかけての筋肉である『中殿筋』に負担がかかり、腰痛を引き起こします。また、骨盤が前傾して膝が伸びてしまい、膝痛になる人もいますし、過度に負担がかかって股関節に痛みが出る人もいます」

底が平らではなく、ヒールのあるタイプ(3)はどうだろうか?

「じつはヒールがあるほうがぺたんこよりも歩きやすいんです。ただし、ヒールの高さが5cmを超えるとケガにつながるので、それ以下のものを選びましょう」

さらに、サンダル選びで失敗しないためには、試し履きが何よりも大事だという。

「店頭でよく見かけるのが、手に持って軽さだけを気にしたり、つま先だけを入れてみて、足入れ感がよいからと購入される方。多少重くても履いてみれば軽いと感じるかもしれませんし、いくら軽くても歩くためのサポート機能を省いているものもあります。両足で履いて、実際に店内を歩いて、確かめてみることが大切です」

この夏は足と一体化するサンダルを見つけて、颯爽と出かけよう。

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