原告の控訴を棄却 旧優生保護法下の強制不妊手術をめぐる損害賠償請求訴訟 仙台高裁

旧優生保護法の下で不妊手術を強制されたとして、宮城県の女性2人が国に賠償を求めた裁判で、仙台高裁は1審の判決を支持し原告の控訴を棄却しました。

注目の判決は1審と同じく原告の敗訴でした。この裁判は宮城県に住む60代と70代の女性2人が、旧優生保護法の下で不妊手術を強制され子どもを産み育てる権利を奪われたなどとして、国に対し計7150万円の損害賠償を求めています。

2019年5月、1審の仙台地裁は旧優生保護法は憲法に違反するとした上で、不妊手術から20年が過ぎ「賠償請求できる権利は消滅している」として訴えを退け、原告が控訴しました。

原告の1人、宮城県に住む飯塚純子さん(仮名・77)です。16歳の時、軽度の知的障害を理由に不妊手術を強制されました。

飯塚淳子さん(仮名)「国がちゃんと認めて目の前で謝罪してもらいたい。あと、きちんとした補償もちゃんとしてもらいたい」

飯塚さんは1日、仙台高裁で控訴審判決に臨みました。

判決で仙台高裁の石栗正子裁判長は、旧優生保護法について「子どもを産み育てる意思決定の機会を奪うもの」として、憲法違反だと指摘しました。

一方で「手術は1955年から1965年に行われたもので、損害賠償を求める権利が消滅する除斥期間が経過している」として、1審の判決を支持し控訴を棄却しました。

旧優生保護法をめぐる一連の裁判では、これまでの高裁判決4件全てで国に賠償を命じる判決が下されていて、高裁で原告側が敗訴するのは初めてです。

控訴の棄却を受け、原告側は最高裁に上告する考えを示しています。

1審に続き敗訴という結果を受け、原告の女性は裁判所の判断に憤りをあらわにしました。

飯塚淳子さん(仮名)「すごい残念です。元気なくなりました。なんで裁判所はもっときちんとやってくれないのか、違法に行われた問題なのに、なんでこんなことをやってるのか、腹が立ちます」

佐藤さん(仮名)の姉「本当に非情なる判決で、がっかりというかこういうことも司法ってあるんだなって認識しました。全国の裁判の判決の中では、最悪ではないかと思います」

原告側弁護団長新里宏二弁護士「20年前にそもそも(権利行使が)できたでしょって、不可能とまでは言えないと言ってしまうと、もうこれの被害っていうのは、こんなこといったらだれも救済されないような被害になりかねない」

1審と同様、原告の訴えを退けた裁判のポイントです。

旧優生保護法とは、障害がある人に強制的に不妊手術を受けさせることを認めた法律です。
改正される1996年までの間に、全国で約2万5000人、宮城県では全国で2番目に多い約1400人が手術を受けました。

問題となっているのは、時の壁です。
損害賠償を請求できる権利というのは、20年経つと消滅してしまいます。これを除斥期間といいます。

1審の仙台地裁判決、原告は1955年から1965年に手術を受けました。
そして20年以上が経過した2018年に提訴します。
このため、仙台地裁は損害賠償を請求する権利が消滅したと判断し、訴えを退けました。

この判決に対し、原告側は障害者差別や偏見が浸透していた手術当時は被害者が手術を打ち明け裁判を起こすことは困難だったとして、除斥期間を適用すべきではないなどと反論しました。

この除斥期間の適用について全国4つの高裁では「正義に反する」などとして、原告側の訴えを認めています。
しかし仙台高裁は「『除斥期間』は、被害者が提訴が難しかったなど主観的事情では左右されない」として、控訴を棄却しました。

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