<金口木舌>闘病と生活を支える社会に

 有能な人が突然退職届を持って来た。驚きながら理由を聞くと、重病を患っており、規定の病休期間では復職できそうにないという。中城村にあるハートライフ病院の仲地貴弘人事課長が直面した経験だ

▼頼りになる人材。闘病を乗り越え、また医療現場に立ってほしい。仲地さんは院長に談判し、職員の治療と仕事の両立を支援する制度を立ち上げた

▼制度設計でハローワークや沖縄産業保健総合支援センターに相談したところ、がんなどの長期療養者の多くが仕事の両立や就職を望んでいると知った。病院と先の2機関で3者協定を結び、患者の就労・就職支援にも取り組むことにした

▼県内の病院が同様の協定を結ぶのは10例目。昨年度は就職を希望する長期療養者231人を支援し、7割近くの就職が決まった

▼どの業界も人手不足に悩む昨今。不測の事態にも職場が温かく支えてあげれば信頼関係も強まり、貴重な人材の流出も防げよう。闘病する人や家族も生活基盤の不安が和らぐ。「温かな社会」にこそ、生産性の向上が見える気がする。

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