思い出詰まった音色を共に 陛下、津波ビオラと再会

2013年7月、学習院OB管弦楽団の演奏会で、奇跡の一本松が描かれたビオラを掲げられる皇太子時代の天皇陛下=東京・池袋の東京芸術劇場

 東日本大震災の被災地、岩手県陸前高田市で4日に開かれる全国植樹祭は、津波で倒壊した家屋や「奇跡の一本松」を部材に使った弦楽器の四重奏が披露される。このうち、ビオラは天皇陛下が2013年に演奏された。陛下は式典に出席し、再会する。製作者は「被災者の思い出が詰まった楽器の音色を、一緒に味わってほしい」と語る。

 ビオラは、弦楽器製作者の中沢宗幸さん(82)が手がけた。11年12月に陸前高田市に赴き、街に積み上がっていた家屋の梁や柱などから木材を探して本体部分に使った。

 楽器の響きを決める部品「魂柱」は「奇跡の一本松」の一部だ。「多くの人が希望をもらった一本松を生かし、後世に伝えたい」との思いを込める。裏板には、青空の下に凜と立つ一本松が描かれている。

 中沢さんは、ビオラが趣味の陛下に弾いてほしいと打ち明け、13年7月、学習院OB管弦楽団の定期演奏会で実現した。

 演奏を終えると、陛下は立ち上がり、客席に向かって一本松の絵がよく見えるようにビオラを掲げた。

「奇跡の一本松」を部材に使った弦楽器を製作した中沢宗幸さん=5月、東京都内

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