さまざまな「愛の形」の写真展。アラーキー(荒木経惟)、題府基之などNYのICPで

(c) Kasumi Abe

ニューヨークのICP(International Center of Photography)で愛をテーマにした新たな企画展Love Songs: Photography and Intimacyが6月2日からスタートする。

ラブソングというタイトルにもあるように、結婚、ハネムーン、子育てなど人生の素晴らしい愛の側面だけでなく、別れや二股、暴力など痛みの愛の側面も含んだもの。

著名写真家のナン・ゴールディン、日本を代表するアラーキー(荒木経惟)の「冬の旅シリーズ」(89-90年)、そしてNY市内の美術館で初の作品お披露目となる題府基之(だいふもとゆき)、中国と日本のカップルで活動歴20年以上になるロンロン&インリ(RongRong&inri  荣荣&映里)など、国際色豊かな16名の写真家の作品250点以上。

荒木氏の作品は90年代、私が日本にいた時、大きな話題になったのを今でも覚えている。この企画展では、71年に結婚した妻・陽子氏との幸せな時間と、90年陽子氏の死去時と猫のチロの作品が通路を挟んで対局に並ぶ。参加者は、興味津々で作品に見入っていた。(トップ写真)

久しぶりにアラーキーの作品を目にしたが、時代が移り変わっても彼の写真は何か訴えかける独特の風情がある。それは国境を越えても、人々に伝わっていると感じた。

3階も展示室では、ドミニカ共和国出身でヨーロッパで活動する、カーラ・ヒラルド・ヴォロウ(Karla Hiraldo Voleau)の、Another Love Story, 2020が飾られてある。カーラが出会った男性Xは同棲をする彼女がいた。その複雑なリレーションシップを、出会いの8月から別れの6月まで時系列に表現したドキュメンタリー作(相手の女性とは信頼関係を築いたそうだ)。顔が写っている元彼Xはモデルさんを雇ったそうだ。写真はケータイで撮影、複雑な三角関係はなかなかリアル。

本企画展は、パリのヨーロッパ写真美術館(Maison Européenne de la Photographie)と提携して企画されたもの。2023年6/2から9/11まで。

Love Songs: Photography and Intimacy @International Center of Photography

ニューヨーク直行便 安部かすみ Text by Kasumi Abe 無断転載禁止

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