子どもたちに伝えたい、子どもの頃に言われて今でも心に残っている言葉。弱視の僕が伝えたいこと。

子どもたちに伝えたい、子どもの頃に言われて今でも心に残っている言葉について、今回は読書日和代表、福島憲太さんにお伺いしました。

子どもの頃に言われて今でも心に残っている言葉はありますか?

「悔しいと思う気持ちは、この子をきっと伸ばしていくだろう」

私はうまれつきの弱視です。
右はほとんど視力がないものの、左は0.08ほどの視力があり、それを活用し生活しています。
私のように視力が弱くて目が見えにくい状態を、弱視といいます。
小さい頃は目が見えない・見えにくい子どものための指導教室に通っていました。
ルーペや片方の目だけを用いて双眼鏡のように遠方を見る単眼鏡の使い方の練習、はさみやのりを使っての工作などをしていました。

このコラムをご覧の方の中にも、お子さんを何らかの療育に通わせている方がおられるかもしれませんね。
よかれと思って通わせている療育、スタッフの方は工夫を重ねて親切に根気よく取り組まれているかと思いますが、お子さんによっては苦手なことも多いかもしれません。
どんなことができるよりも先に、自分が「できないことがある」と気付いてしまうこと、そして「努力したことが、必ずしも結果に結びついて見えないこともある」という場面に遭遇することになります。
そんな苦手と感じることにも取り組む療育を受け終えた後、教室の先生が母に当日の様子を報告している際に発したのが冒頭の「悔しいと思う気持ちは、この子をきっと伸ばしていくだろう」という言葉でした。

この言葉を聞いたときは、子どもながらとても癒された気持ちになりました。悔しいという気持ちも無駄ではない、感じてはいけないことではないのだとも思いました。

自分の何が変わりましたか?

ではこの言葉を聞いたから、何か変わったか?どうでしょう。
親からしたら、目の前にいる子が手のかかる子どもであることも、もちろん私の目が見えにくいことも変わりません。
そうそう、人は変わらないものですね・・・。
療育の後、お子さんの様子はいかがですか?
楽しそう?
集中していたから疲れていそう?
ぜひ様子を気にかけながら、療育でどのようなことに取り組んだのか、そのときにどんなふうに感じたか、子どもさんに聞いてみてくださいね。
悔しいと思う気持ちは、きっとその後の成長につながると信じて。

[執筆者]

福島憲太
出版社・読書日和代表。

[プロフィール]
1983年福井県武生市(現在の越前市)生まれ、京都市育ち。
うまれつき視力が弱くて目が見えにくい弱視だが、文章を書く人になりたいという昔からの夢を諦められず、佛教大学教育学部臨床心理学科を卒業後、一般企業等での勤務を経て2018年6月に読書日和を起業。2023年6月に、創業6年目を迎える。
金子あつしというペンネームで執筆を続けるフリーライターとしても活動。
これまでに3冊の本
『風疹をめぐる旅~消される「子ども」・「笑われる」国~』
『ひかりあれ! ~二分の一成人式の前に家族について調べてみた~』
『今日もゲームの世界にいます』(すべて読書日和刊)を発行。
全ての出版物にテキストデータを用意して音声読み上げを可能にしたり、読み手に優しいフォントを使用したりと、視覚障害があるからこそできる「誰しもが読みやすい本づくり」を常に目指し、日々取り組んでいる。

読書日和
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