新型ワゴンRは安全装備充実で価格は140〜160万円とお買い得!?

スズキ ワゴンRは2017年2月に発売され、今年で6年目となり、そろそろフルモデルチェンジを迎えることとなりそうです。そこで今回は今年登場予定のダイハツ 新型ムーヴのライバルでもある新型ワゴンRのボディサイズやエンジンタイプ、安全装備、価格などをカーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎さんが予想、解説します。

スズキ ワゴンR FX

2024年に登場予定の新型ワゴンR

2023年5月16日に掲載した通り、ダイハツの販売店では、5月中旬から新型ムーヴの予約受注を開始しました。新型ムーヴでは、後席側のドアがスライド式になり、機能的には新型ムーヴキャンバスに近い軽自動車となっています。

そこで気になるのが、ムーヴのライバル車になるスズキ ワゴンRの動向です。

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

そんなワゴンRのフルモデルチェンジについて、販売店に問い合わせたところ、以下のように回答がありました。「次期型ワゴンRに関して、今のところメーカーから話は聞いておりません。ワゴンRは2022年(8月)に改良を行っており、フルモデルチェンジを行うとしても、2024年に入ってからだと思います」。

2022年に行ったワゴンRの一部改良では、安全装備などを充実させ、カスタムZという新しいシリーズも加えました。これは標準ボディで顔立ちを変えていた従来のハイブリッドFZを、独立させた仕様ともいえます。そのために今のワゴンRは標準ボディ、カスタムZ、スティングレーの3シリーズをそろえます。

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

新型ワゴンRのボディサイズ|現行型と同等に落ち着きそうだ

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

さて2024年に登場予定の新型ワゴンRは、どのようなクルマに進化するのでしょうか。

まずは新型ワゴンRのボディサイズから考えてみましょう。軽自動車ですので、全長と全幅は現行型と同じで、全高も同等の1650mm前後を維持すると思われます。

今の軽自動車には、車内の広さが求められるため、天井を下げることは難しいです。逆に背を高くすると全高1785mmのスズキのスーパーハイトワゴンである新型スペーシアに近付きます。それでは同門でユーザーを取り合う形となってしまうので、新型ワゴンRでは全高は上げにくいと考えられます。そうなると現行型と同程度に落ち着くでしょう。

新型ワゴンRはスライドドア不採用?|軽自動車のトレンドはスライドドアの導入

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

新型ワゴンRの後席側のドアの形状は、現行型と同じく横開き式になる可能性が高いです。新型ムーヴは今回のモデルチェンジでスライド式を採用していますが、ワゴンRでは事情が異なるからです。ここからは他社を含めた軽自動車の最近のトレンドについて触れていきます。

新型ムーヴがスライドドアを採用する背景には、すでにスライドドアを装着する新型ムーヴキャンバスの商品特徴があります。新型ムーヴキャンバスはフロントマスクなどに丸みを持たせ、柔和な雰囲気に仕上げました。

ダイハツ 新型ムーヴキャンバス

後席の下には引き出し式の収納設備が装着され、引き出した状態でついたてを立ち上げると、バスケット状になって内側に置いた買い物袋が倒れにくいという機構を用意しています。

このように新型ムーヴキャンバスは、スライドドアを装着するものの、デザイン、装備ともに個性的です。

しかし「スライドドアは欲しいけれど、見た目はシンプルなものが良い」というユーザーも多いでしょう。そのニーズを補う意味もあり、新型ムーヴはスライドドアを装着しながら、外観、荷室、収納設備などをオーソドックスに仕上げられています。

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

一方、スズキにも新型ムーヴキャンバスに相当する新型ワゴンRスマイルがありますが、このデザインと機能は、新型ムーヴキャンバスほど個性的ではありません。

後席の格納方法も一般的で、シートの下に収納設備を装着しない代わりに、コンパクトに格納できるように設計されています。

スズキ 新型ワゴンRスマイル

つまり新型ワゴンRスマイルは、デザイン、機能ともにオーソドックスですので、新たにスライドドアを装着する新型ムーヴに似ています。仮にワゴンRにスライドドアを装着してしまうと、新型ワゴンRスマイルに近付き、似通った商品になってしまい、差別化がしにくいです。

したがって新型ワゴンRは、スライドドアを装着せずに横開きドアを採用すると予想されますが、軽自動車の開発者からは次のような意見も聞かれます。

「背の高い軽自動車を開発するなら、今はスライドドアが必須条件です。横開き式ドアで売れ行きを伸ばすのは難しいからです」。この点も考慮すると、新型ワゴンRがスライドドアに変更される可能性も否定はできません。

スズキ 新型ワゴンRスマイルのスライドドア

ちなみにスーパーハイトワゴンのダイハツ タントが、2代目にフルモデルチェンジして、スライドドアを初めて装着したのは2007年12月でした。この1か月後には、スズキがスペーシアの前身になるスライドドアを装着した初代パレットを発売しています。

スズキ パレット

開発者は「軽自動車は日本向けの商品で、各メーカーとも、同じお客様を想定して商品を開発します。そのために打ち合わせをしたわけではないのに、同じ時期に似通った商品が登場することも多いです」と述べました。このパターンだとすれば、新型ワゴンRにもスライドドアが設定されるかもしれません。

新型ワゴンRはプラットフォームが刷新|今後のEV展開も見据えた仕様に

新型ワゴンRは、プラットフォームが新たに開発される可能性も高いです。現行ワゴンRでも新しい「ハーテクト」と呼ばれる軽量で高い剛性を発揮する新型プラットフォームを先代アルトの次に採用し、その後のスズキ車に幅広く使われた経緯があります。今回も同様のパターンとなる可能性があります。

今のスズキでは、販売台数は新型スペーシアが最も多いですが、全高はワゴンRが中心的な数値です。同じく軽自動車の日産 新型デイズや三菱 新型eKワゴン&新型eKクロスのプラットフォームが、電気自動車(EV)の日産 新型サクラや三菱 新型eKクロスEVを想定して開発されたように、新型ワゴンRも今後登場する電気自動車を視野に入れた新開発プラットフォームが採用されることでしょう。

三菱 新型eKクロスEV, 三菱 新型eKクロス
三菱 新型eKクロスEV, 三菱 新型eKクロス

新型ワゴンRはフルハイブリッドが導入される可能性も!|新型ワゴンRのエンジンタイプ

新型ワゴンRのパワーユニット(動力源)は、ハイブリッドも従来のマイルドタイプではなく、スズキ ソリオなどが採用するフルハイブリッドが新たに搭載される可能性があります。このフルハイブリッドは機能が比較的シンプルで、価格の上乗せも少ないことが特徴です。

スズキ ソリオのハイブリッドエンジン

2023年末頃には、ダイハツ 新型ムーヴにもダイハツ 新型ロッキーと同様のeスマートハイブリッドが追加される予定です。eスマートハイブリッドが追加された新型ムーヴはWLTCモード燃費が30km/Lを超える可能性も高く、低燃費に貢献します。そのため、新型ワゴンRもライバル車に負けないように、そして2030年度燃費基準への対応も含めてフルハイブリッドが搭載されるかもしれません。

ダイハツ 新型ロッキーのeスマートハイブリッド

新型ワゴンRの安全装備|自転車や歩行者の検知能力が高まる!?

新型ワゴンRは安全装備も進化するでしょう。衝突被害軽減ブレーキは、最新のものが搭載される可能性が高いです。自転車への対応が可能になり、自車が右左折する時に、直進してくる対向車や横断歩道上の歩行者を検知して作動できるようになると考えられます。ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して知らせる機能などが加わる可能性も高いです。

今のスズキ車の安全装備は、古さを感じさせることもあり、新型ワゴンRで進化させ、他のモデルにも展開されていくことが考えられます。

新型ワゴンRの価格予想|買い得グレードは140万円前後に落ち着く模様

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

新型ワゴンRの価格を考えてみましょう。おそらくは現行型に近い価格設定とされるはずです。軽自動車は、価格の割安度がユーザーのクルマ選びに大きな影響を与え、ライバル車同士の競争も激しいからです。割高感が生じると売れ行きが下がるため、機能を充実させて最小限度の値上げに抑えます。

したがってノーマルエンジンを搭載する2WDの場合、標準ボディの買い得グレードは140万円前後となるでしょう。現行型のマイルドハイブリッドFX-Sが138万6000円ですので、機能を充実させた分だけ少し値上げする程度にとどまると考えられます。

フロントバンパーなどに専用のアイテムを備えたエアロ仕様は約20万円高く160万円前後の見込みです。現行型のマイルドハイブリッドZXに、アルミホイールなどをセットにしたアップグレードパッケージを装着すると154万円ですので、新型ではもう少し値上げされて160万円前後に落ち着くと考えられます。

ターボエンジン搭載車は175万円前後となるでしょう。もしスライドドアが装着され、さらに両側に電動開閉機能を採用した場合は、価格が5〜10万円上乗せされる可能性もあります。

以上のように新型ワゴンRは買い得度を強め、新型ムーヴと新たに激しい競争を展開していくこととなるでしょう。

スズキ ワゴンR(画像は現行型)

まとめ|ハイトワゴンが再び脚光を浴びる機会も!

今の売れ筋は新型スペーシアやダイハツ 新型タントなどのスーパーハイトワゴンですが、全高が高すぎることを気にするユーザーもいます。これからは全高を1600〜1700mmに設定したハイトワゴンの人気が復活する可能性も高そうです。

【筆者:渡辺 陽一郎 カメラマン:堤 晋一/森山 良雄/茂呂 幸正/雪岡 直樹/スズキ/MOTA編集部】

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