ナスカの地上絵、AIで特定 山形大・坂井教授が4点、肉眼より21倍速く

AIを活用して特定した地上絵「鳥」(山形大ナスカ研究所提供)

 南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」の調査を進めている坂井正人山形大教授(文化人類学・アンデス考古学)は1日、AI(人工知能)の深層学習(ディープラーニング)技術を用いて地上絵4点を特定したと発表した。AIを活用すると肉眼よりも約21倍速く特定作業が進むといい、さらなる研究への活用が期待されている。

 地上絵の特定には高解像度の航空写真を用いるが、肉眼で追って新たな候補を見つけるには膨大な年月を要する。効率的な発見方法を模索しようと、坂井教授が日本IBMと共同で2018年から実証実験を進めてきた。

 一つ一つ異なる未知の地上絵を、どうやってAIに特定させるかが課題となった。そこで、既に見つかっている地上絵の画像を「部位」ごとに分割した。未知の地上絵にも類似した要素が存在するとの仮説を立て、分割したパターンをAIにトレーニング・データとして学習させた。地上絵全体ではなく、部位として検出することを目指した。

 坂井教授らは地上絵が集中的に分布しているナスカ台地北部で実証実験を行い、検出モデルの有用性を確認した。現地調査にも活用し、人型、脚、魚、鳥の4点を特定した。今回の研究成果は国際学術雑誌にも掲載されている。

 坂井教授がこれまでに発見した地上絵は今回の4点を含め358点に上る。今後はナスカ台地全体を対象とし、IBMワトソン研究所(米国)とAIを利用した地上絵の分布調査に取り組むほか、ペルー文化省と連携した地上絵の保護活動を進めるという。坂井教授は「今後、AI抜きに地上絵を調査することは考えられない」と話している。

AIを活用して特定した地上絵「鳥」の図版(山形大ナスカ研究所提供)

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