5月24日、宮城県の東北電力女川原子力発電所をめぐり、地元住民が再稼働の差し止めを求めていた裁判で、仙台地裁は原告側の訴えを退けました。静岡県内には浜岡原発があります。いまも国による安全審査が続いています。そんな中、電気料金の高騰が私たちの生活を圧迫しています。
この裁判では原発がある宮城県女川町の西隣にある石巻市の住民が「事故が起きた際の広域避難計画には実効性がない」などとして、東北電力に対し、女川原発2号機の再稼働の差し止めを求めていました。しかし、仙台地裁の判断は原告の敗訴。2024年2月に原発再稼働を目指す東北電力にとっては追い風となりました。
<山口駿平記者>
「仙台地裁は女川原発の再稼働差し止めの訴えを退けました。御前崎市の浜岡原発は今も再稼働のめどはたっていません」
浜岡原発は2011年に起きた東日本大震災以降、運転を停止しています。中部電力は防潮堤のかさ上げをするなど、再稼働に向け安全対策を講じていますが、原子力規制庁による審査はまだ続いています。
そんな中、全国的に電気料金の高騰が止まりせん。
<70代女性>
「(電気代は)倍近くになってるもんね。それを払うために他にお金が使えなくなることでしょ」
<子どもを持つ30代男性>
Q.子どもがいると電気を使う?
「結構関わってきますね。(子どもは)遅くまで起きてるとかあるんで」
御前崎市にある人気の飲食店です。こちらでも電気代高騰の影響を受けているといいます。
<夢想屋 大本昌義店主>
「2割以上、3割くらい上がってるじゃない。えらい上がってるな。しょうがないだよ、もう」
経費削減のために提供する料理の量を少し減らすなど知恵を絞っていますが、簡単に節電することはできないのが現状です。
<和風ビストロ夢想屋 大本昌義店主>
「5つあるから、うちは冷蔵庫はそこで結構電気は食うよね」
Q.それを1台使わないとか、抑えるわけにはいかない?
「そういうわけにはいかない。冷蔵庫だけは金庫と一緒だから」
困った大手電力7社は6月1日の使用分から、電気料金の値上げに踏み切りました。東北電力では3月に一度、値上げの申請を国から断られています。しかし…。
<東北電力 樋口康二郎社長>
「当社としては1か月あたり70億円から80億円の当社の持ち出しが発生する」
燃料価格の高騰などを理由に再び申請し、今回ようやく値上げが認められたのです。
終わりの見えない電気代の高騰。今回、唯一値上げしなかった中部電力ですが、東北電力同様、原発の再稼働をきっかけに電力の安定供給を目指そうとしているだけに、その動きから目が離せません。
SBSでは、今回浜岡原発の周辺4つの市のトップに、原発と電気代高騰に関するアンケートをしました。まず、「電気代高騰は浜岡原発の再稼働の是非に影響を与えるか」と聞きました。
<柳沢重夫御前崎市長>
再稼働の是非は審査結果が出てから検討する
<杉本基久雄牧之原市長>
電力価格の高騰と浜岡原発再稼働については別問題で、再稼働について議論する段階にないと考える
<長谷川寬彦菊川市長>
電力価格の高騰と審査が継続中の再稼働については一つの問題として考えることはできない
<久保田崇掛川市長>
電力価格の高騰に関わらず、万全な安全対策が完了し、市民の理解が得られなければ再稼働はできない
と答えていて、いずれの市長も電気代高騰の問題と再稼働の問題を結びつけない姿勢が目立ちました。
「電気代高騰の問題にはどう対応すべきか」という問いには、
<杉本基久雄牧之原市長>
国による持続可能なエネルギー政策の推進とエネルギーの効率的な利用促進が重要
<長谷川寬彦菊川市長>
国が国民の理解をしっかり得るように対応すべき
<柳沢重夫御前崎市長>
電力価格の高騰にかかわらずエネルギーミックスの実現が重要であると考える
<久保田崇掛川市長>
電力市場に左右されないためには再生可能エネルギーの地産地消が必要
と答えています。まだまだ続く電気代の値上がり。原発を再稼働すればその負担は本当に減るのでしょうか。目先の利益だけではなく将来をしっかり見据えた慎重な判断が必要になってきそうです。