「次元の異なる少子化対策」素案 長崎県内の反応 育児の面でも環境整備を

 政府が6月1日に示した「次元の異なる少子化対策」の素案。児童手当拡充や育児休業の給付金引き上げなどの経済支援策が盛り込まれたが、裏付けとなる財源確保の具体策は示されなかった。長崎県内の子育て世代からは金銭面だけでなく、安心して子どもを育てられる環境の整備を求める意見が多く聞かれた。
 児童手当は所得制限を撤廃し、0歳から高校生まですべての子どもが対象。第3子以降は3万円になる。
 第1子が昨年生まれた会社員の30代夫婦=大村市=は「3人目以降よりも1人目からの支援を手厚くしてほしい」と訴える。保育料は児童手当でカバーできる金額ではなく、所得税の減免も望む。県立大佐世保校3年の越智琉聖さん(20)は児童手当拡充などを一定評価しつつも、就職後の給与と子育ての費用負担を考えると「(経済的な)余裕はないのではないか」と疑問視する。
 「相次ぐ値上げで食費などがかさむ上に、ガソリン代も高く、家計に影響している」と打ち明けるのは五島市で4人の子どもを育てる農業の女性(36)。「今回の金銭的な支援を実行するだけでなく、子どもの遊び場など子育てしやすい環境も充実させてほしい」と注文を付けた。
 長崎市の山本真由さん(23)は生後6カ月の子どもが保育園に入れず待機状態。「待機児童の解消や男性が育休を取りやすい環境づくりを進めてほしい」と求めた。
 政府が創設を目指す財源の「支援金制度」は社会保険料への上乗せが念頭にあるとされ、実施されれば企業の経営を圧迫しかねない。大村市の卸売・ホテル業、九州教具グループ代表の船橋修一さん(64)は「コロナ禍中の融資返済やコスト高などこれから支出が増えるのに、企業負担が増えるのは正直厳しい」と話す。さらに「少子化対策としても根本的にポイントがずれている。子どもが増えないのは若い世代が国の将来に不安を感じているからだ」と指摘。「財源の説明もなく、まるで『打ち出の小づち』を振っているようで現実感がない。経営者から見ると無責任に感じる」と批判した。
 佐世保市の子育て支援団体「ちいきのなかま」事務局長の守永恵さん(62)は「親の就労状況にかかわらず誰でも保育施設を利用できる制度創設など現実味のなさも感じるが、児童手当の拡充などは悪いことではない。これらで少子化に歯止めが掛かるとは思えないが、取りあえず始めるしかないのではないか。ただ本当は高齢者の介護保険のように、子どもを『真ん中』に置いた制度を構築することが求められている」と話した。

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