児童養護施設で訪問カット 美容室代表・原田さん「苦労してきた子どもの役に」

児童養護施設でのボランティアカットに取り組む原田さん=長崎市、「A SALON NEWYORK」

 始まりは2018年夏。長崎市の児童養護施設「マリア園」移転前の最後の夏まつりを訪れた日だった。「いつかマリア園のために何かしたい」。長崎市の美容室代表、原田敦子さん(47)は、ふと思った。幼い頃、当時のマリア園や修道院と同じ建物内にあった幼稚園に通い、園は身近な存在だった。
 翌年、ボランティアを申し出ると、ちょうど同園でカットを担当していた美容師が訪問できなくなったと聞いた。知り合いの美容師に呼びかけ、2カ月に1回、同園へ通い始めた。
 同市出身。18歳で上京し、東京のヘアサロンで約8年間、米ニューヨークで約14年間働いた。苦労もあったが、それを支えたのは古里で店を出すという夢。2017年、美容室「A SALON NEWYORK」を長崎市古川町で開業した。同店で開発した県産つばき油を使ったシャンプーとトリートメントは21年、県の優良特産品に選ばれた。
 同園でボランティアカットを始めて3年半。おとなしかった子どもがお礼やカットの要望を言えるようになるなど、成長を身近で感じられた。いつの間にか温かくて大切な時間になっていた。
 正直、大変さもある。美容師が集まらず、多い日は約4時間、一人当たり10人以上をカットする。会話もままならず、必死ではさみを握った。道具などは自費で用意し、金銭的負担もあった。
 「これ、いつまでできるんだろう」。本業との両立に限界を感じていた今年2月。日本児童養護施設財団が募集する児童養護施設に関わるボランティア活動支援の補助金の存在を同園長が教えてくれた。応募すると、4月に採択され、胸をなで下ろした。「これで続けられる」
 もっと美容師仲間を巻き込み、子どもたちとゆっくり会話したい。カット以外でも多くの経験をしてほしい-。「苦労してきた子どもたちの役に立ちたい。それだけですね」。経営者と美容師という多忙な毎日でも、さまざまな事情を抱えた子どもたちの姿に突き動かされている。
 現在、カット・スタイリストの経験のあるボランティアを募集。訪問日は隔月月曜の午後3~6時ごろ。謝礼(金額未定)と交通費を用意する。問い合わせは原田さん(電095.801.0880)。

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