「努力して、結果を出せたときの喜びが幸せ」ポールを獲得した井口卓人/山内英輝組が感極まった理由

 6月3日、三重県の鈴鹿サーキットで開催されたスーパーGT第3戦鈴鹿の公式予選で、GT300クラスのポールポジションを獲得したのは井口卓人/山内英輝組SUBARU BRZ R&D SPORTだった。予選後、ふたりはJ SPORTSのインタビューに答え、井口がやや感極まる様子も見られた。そこには、ふたりが今季味わってきた苦労があった。

 2021年のGT300チャンピオンであるSUBARU BRZ R&D SPORTの井口と山内は、連覇を目指した2022年はタイトルに迫りながらも、第8戦もてぎで悔しい思いを味わってきた。迎えた2023年に向けては王座奪還、そして山内個人としては、スーパーGTのこれまでの最多ポールポジション獲得記録更新を目指していた。

「今年中に成し遂げたいですし、誰にも抜かれない記録を自分自身で作り上げていきたい」。山内は2月にそんな意気込みを残していた。

 ただ、第1戦岡山、第2戦富士と、なかなかチームの思いどおりにストーリーは進まなかった。新シーズンに向けECUの改良やボディ下面、フロアパネルを中心とした空力の改良などさまざまなトライを行ってきたが、第1戦は予選22番手、第2戦は19番手。当然、集団に飲み込まれてしまうとBRZの“武器”である空力の良さは活かせない。当然決勝にもそれは響き、なんとふたりは今季まだ無得点なのだ。

 このプレッシャーに苦しめられていたのが井口だ。予選後の記者会見では「ニュルブルクリンク24時間に行っても富士24時間に行っても、ずっとスーパーGTのQ1のことを考えていた」と夢にまでQ1のことが出てきたと吐露した。

 予選後、感極まった理由について井口に聞くと「いろいろあったので(苦笑)。開幕戦と第2戦でQ2に繋げなかった悔しさがものすごくあったんです」と明かした。

「ウエイトが乗ってきたクルマもいますが、その中でもQ2に繋ぐのがQ1アタッカーの仕事ですから。それが実行できてホッとした気持ちと、Q2にしっかり繋げることができれば、こうして山ちゃんが素晴らしいアタックをしてくれるので、それが全部重なってウルっと来ちゃいました」

 そんな井口をQ1のアタッカーとして、そして友人として信頼してきた山内が、思いに応えたのがQ2だった。ダンロップタイヤのQ2のパフォーマンスアップの勢いにも乗り、1分55秒775という驚異的なラップを記録。見事13回目のポールポジションを獲得し、今季の目標をまずひとつ達成してみせた。

 アタックすればポールを獲る自信はあったのかと山内に聞くと「自信はありました」とは言うものの、3戦目での記録達成は遅すぎたかといえば「いえいえ。いろいろあったので(苦笑)。これまでうまく合わせ切れなかったからこその結果でしたから」と語った。

 山内は記録達成は喜びながらも、やはり今季ここまでの苦労からくぐり抜けはじめたからこそのポールポジションを、さらに喜んでいるようだった。

「みんなで努力して、結果を出せたときの喜びが幸せだと感じますね」

 堅い信頼で結ばれたふたりは、夕暮れの鈴鹿でホッとしたような笑顔とともに、キッズピットウォークでのファンとの交流を楽しんでいた。

2023スーパーGT第3戦鈴鹿 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)

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