名古屋城復元に関する市民討論会で障害者への差別発言 河村市長「聞こえなかった」

 名古屋市内で3日に開催された、名古屋城の木造天守復元に関する市民討論会で、バリアフリーの観点からエレベーターの設置を求める身体障害者の意見に対し、複数の参加者から「お前が我慢せえ」などの暴言を含む差別発言があったことが分かった。討論会に参加した河村市長含め、市職員も発言を諌めたり止めたりすることはなかった。

運営の市職員らも発言止めず 河村市長は「よう聞こえんかった」

 この日開催された市民討論会には、市が無作為に抽出した18歳以上の住民から希望者が出席。河村市長も参加した。

 市の復元計画では、地階から地上1階まで昇降機を設置することが盛り込まれているが、天守上層階まで設置するか、エレベーターにするかを含め何も決まっていない。ただ河村市長は木造による建造の目的は当時の姿を復元することだとして、昇降機を設置しないことを暗に示唆しており、障害者らが人権侵害だと反発している。

 討論会には様々な意見を持つ市民が参加し意見を述べたが、車椅子の市民が天守最上階までのエレベーター設置を訴えると、その後発言した他の市民から「バリアフリーの話は荒唐無稽」「どこまでずうずうしいのか」「お前が我慢せえよ」などと先に発言した男性を事実上個人攻撃する発言を行った。その直後に発言した市民も、障害者への差別表現を使って非難した。

 会場で運営に当たっていた市の職員は、発言が続く中静止することも諫めることもなく、河村市長も反応していなかった。討論会後、会の担当者は差別発言だったことは認めたが、対応しなかったことについて特に見解は示さず、今後の運営課題だとのみ述べた。また河村市長は報道陣から見解を問われると「よう聞こえなかった」「自由に言ってもらうのが前提で、広い気持ちで考えるのが普通」と、差別発言を容認したとも取れる見解を示している。

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