【海外の反応】『THE FIRST SLAM DUNK』が韓国・中国で人気なわけ。過去には『ダンクの達人』の題で大ブームに

いま、世界中が「スラムダンク旋風」に包まれています。日本では一足早く、2022年12月に劇場公開され、大ヒットを記録している映画『THE FIRST SLAM DUNK』。

同作が続々と世界各国で封切られ、特にアジア圏では社会現象とも言えるような空前の大旋風を巻き起こしているのです。
本稿では、そんな世界における「スラムダンク現象」について、特に公開が始まったばかりの韓国、中国での反応を中心にお伝えします。

映画『THE FIRST SLAM DUNK』公式サイトより

TVアニメで描かれなかった待望の山王戦

『THE FIRST SLAM DUNK』は、1990年から1996年まで「週刊少年ジャンプ」にて連載された累計発行部数1億2000万部を超える、井上雄彦原作による大ヒット漫画『SLAM DUNK』を原作としています。

不良高校生の桜木花道が思いを寄せる晴子の気を引くため、湘北高校バスケ部に入部し、そこで様々な経験を積みながら、プレイヤーとしても人間としても成長していく姿を描きました。

1993年にはアニメとなり、こちらも様々な国と地域で放映され、高い視聴率を記録。

DVD『SLAM DUNK THE MOVIE』(東映)

映画『THE FIRST SLAM DUNK』では、アニメシリーズでは描かれなかった「山王戦」の様子が活写されており、約25年ぶりとなる“続編”といった捉え方をしているファンも多いようです。

しかしながら、今回の映画の主人公は桜木花道ではなく、湘北高校2年のポイントガード、宮城リョータ。原作やアニメでは深く描かれることのなかった彼の生い立ちや家族といったものにフォーカスされており、まさに誰も観たことがない新たな「SLAM DUNK」が描かれている印象です。

そんな本作に対して世界のファンはどのような印象を持ったのか?まずは、お隣、韓国の反応を見てみましょう。

韓国で『君の名は。』を抜く大ヒット。努力する姿が新鮮?

韓国で本作は2023年1月より上映がスタートしました。上映開始早々に、観客動員数ランキングにおいてトップを奪取すると、瞬く間に国中が「スタムダンク旋風」に包まれ、日本映画歴代観客動員数1位に君臨していた新海誠監督による『君の名は。』を抜き、歴代1位に躍り出るほどの大ヒットを記録。

『THE FIRST SLAM DUNK』オリジナルサウンドトラック (Universal Music)

観客の年齢層に関しては30代から40代が多いようで、ちょうど原作コミックが韓国に輸入された約30年前に少年・少女だったファンが劇場に足を運んでいるよう。

SNS上で拡散されている投稿やテレビのニュース番組でインタビューを受けるファンからは、「最近は突然強くなる主人公が多いけど、『スラムダンク』は努力に努力を重ねて強くなっていくところが良い」や「とても新鮮に映った。もう一度観たい!」といった意見が強く印象を残しました。

確かに、近年の作品は1980年代から90年代の作品と比べると、突然変異的な強さを兼ね備えたキャラクターが多くなったように思います。

Blu-ray『SLAM DUNK THE MOVIE』(TOEI COMPANY,LTD.)

その点『SLAM DUNK』はバスケど素人だった花道が、見る見るうちに成長していく様子であったり、全国という観点から見れば弱小チームと言っても良い湘北高校が快進撃を見せていく描写など、「友情・努力・勝利」の少年マンガの三大要素を極めた一作と言えます。こういった物語に心を動かされるというのは万国共通のようです。

韓国では現在、原作コミックの人気にも再び火がつき、売り上げを大きく伸ばしていると言います。また、グッズの売れ行きも好調なようで、販売店には連日長蛇の列ができていたとか。

それでは、今まさに公開が始まったばかりの中国はどのような様子なのでしょうか?

中国では『ダンクの達人』を待ち続けていた

日本でも連日、中国における「スラムダンク現象」が報じられていますが、その熱狂ぶりには凄まじいものがあります。

なんと、前売り券だけでも20億円もの売り上げを記録したのです。中には「私にとって、これは映画じゃない!試合なんだ!」という熱いコメントを残すファンも。

中国では4月20日より上映が開始されており、公開2日間で興行収入が1.75億元、日本円にしておよそ34億円を超える異例の大ヒットとなっているようです。

中には『SLAM DUNK』の大ファンである社長が、会社の全社員に映画のチケットを配り、「社内全員が『THE FIRST SLAM DUNK』を観た」として取り上げられる企業も存在するほか、劇場内の全シアターが『THE FIRST SLAM DUNK』を上映している映画館もあり、中国国内におけるアニメ映画上映回数の記録を更新したと言います。

なぜ、『SLAM DUNK』はそこまで中国の人々を惹きつけるのでしょうか?
中国で『SLAM DUNK』は「ダンクの達人(灌籃高手)」のタイトルで知られ、1990年代に漫画よりも先にアニメが輸入される形で放送が開始されました。

DVD『SLAM DUNK VOL.1』(東映ビデオ)

当時はマイケル・ジョーダンの人気も相まって、空前のNBAブームの時代。そんな背景もあり、『SLAM DUNK』は多くの視聴者を獲得しました。そのため、アニメで『SLAM DUNK』を知ったというファンも多く、アニメ版では語られなかった“続き”を待ち続けてきたファンも少なくないようです。

中には、中国での公開を待ちきれずに、マカオや韓国へと足を運び、20回以上も鑑賞したという猛者もいるほどです。

「諦めたら、そこで試合終了」「バスケがしたいです」などの名セリフも人々を惹きつけている要因だそうで、やはり名作は国境を越えて、様々な国との懸け橋になるのだなということを改めて痛感させられた次第です。

聖地巡礼もさらなる賑わい

アニメ『SLAM DUNK』オープニングに登場する神奈川県・鎌倉市の「江ノ電・鎌倉高校前」の踏切は、世界中から聖地巡礼に訪れたファンたちで賑わっています。映画が公開になる以前から多くのファンで賑わっていた聖地でありますが、現在はさらに多くのファンが訪れるようになったと言います。

国境を超えて愛され続ける『SLAM DUNK』、そして日本のアニメというものは、これほどまでに絶大な力を有しているのです!この旋風がさらに拡大していくことをファンとして、大いに願うばかりです。

(執筆:zash)

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