【シンガポール】採用活動、対話型AIで自動化[IT] HRテックのスタートアップ

ハイアークオティエント・テクノロジーズのスマースビーア・シダナCEO(同社提供)

シンガポールのHRテック(ITを活用した人事サービス)企業ハイアークオティエント・テクノロジーズ(HireQuotient Technologies)は、対話型人工知能(AI)の「チャットGPT」を組み込んだ人材採用の自動化ソリューションを提供している。まず米国の営業・マーケティング職の求人活動の支援を開始した。今後は他の市場にも対象を拡大し、採用市場の世界で革命を起こす考えだ。【Celine Chen】

ハイアークオティエントは2021年設立。シンガポール、米国、インドにオフィスを構え、従業員数は約50人だ。先進的なHRテックソリューションを用いて、顧客企業が質の高い労働力を確保することを目指している。

人材ソーシング、スキル評価ソフトウエア、コンサルティングサービス、非技術系採用ソリューション、ビデオ面接プラットフォームなど、複数のサービスやソリューションを提供している。

世界中の優良企業を含む100者以上の組織が、ハイアークオティエントの製品やサービスを利用。シンガポールでは、省庁、米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)、シンガポールの電子商取引(EC)大手ラザダ、ショッピーなどが顧客だ。

現在注力しているのが、世界中で注目を集めているチャットGPTの機能を活用した、完全自動の人材ソーシングソリューション「イージーソース(EasySource)」の開発・販売だ。優秀な候補者のソーシング、スクリーニング、面接、評価といった複数のプロセスを合理化し、企業が迅速かつ効率的に採用活動をできるよう支援している。

具体的には、チャットGPTとビジネス向け交流サイト(SNS)のリンクトインを連携させ、企業と求職者が簡単にコミュニケーションできるように設計。採用担当者は、候補者の電子メールに連絡を取り、リンクトインの招待通知や個別化されたメッセージを送信したり、候補者の回答を一つの画面で管理したりできる。

インターンシップと職務経験を分離し、特定の職務に関連したプロフィルも提供できる。より正確なジョブマッチングを実現するため、候補者のスキルを職務記述書と密接にマッチングさせることもできる。

まず米国で営業・マーケティング職の候補者を探している採用担当者向けのサービスの提供を開始した。今後は世界の他市場の採用担当者や求職者が利用できるよう開発を進める。人間が命令した作業をAIが最初から最後まで実行するアプリ「オートGPT」の導入にも取り組んでいる。

ハイアークオティエントの共同創業者であるスマースビーア・シダナ最高経営責任者(CEO)はNNAに対し、「イージーソースの目的は、人材調達における『人的要素』を維持しながら、採用担当者が適切な人材を素早く調達できるようにすることだ」と語った。採用担当者は、これまでのように数時間を費やすことなく、複数のチャネルで優秀な候補者を獲得することが可能になると付け加えた。

世界中の多くの企業が、無関係または不適格な応募者を含む人材プールから有能な候補者を見つけ、採用することに苦労している点にも言及。ソーシングプロセスを簡素化し、「企業が適切な人材を迅速に特定・採用できるようにすることを手助けしたい」と意気込みを語った。

ハイアークオティエントは、起業直後のプレシード資金として300万米ドル(約4億1,600万円)以上を調達した。現在はシリーズAと呼ばれる初期段階の資金調達を計画しており、調達した資金でさらなる事業拡大を目指す考えだ。

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