細島の食文化 モデル事業に 観光協発信へ文化庁採択

商人町だった細島地区のかつての風情を伝える1879(明治12)年建築の町屋「関本勘兵衛家住宅」

 文化庁が所管する本年度の「食文化ストーリー創出・発信モデル事業」に、日向市観光協会の「漁師町と商人町文化が育んだ細島の食文化継承発信事業」が、本県で唯一選ばれた。同協会は文化財登録を目指した調査や外食での提供などを予定しており、「細島独自の食文化を掘り起こし、日向市を全国に発信したい」としている。
 太平洋に面した良港の細島港がある細島地区。漁師町である一方、江戸時代以前から東九州の貿易拠点として栄えた商人町でもあり、二つの文化が共存している。刻んだカツオとご飯を合わせ丸めて表面をあぶった「こなます」など漁師めしが有名だが、サメの干物をダイダイの酢に漬けた「干しフカ」など、交易のあった関西の食文化から影響を受けたとみられる商人町の料理も伝わる。
 同協会の高木慎平事務局長は「こなますやマグロの胃袋『ごんぐり』を使った料理は市内に提供する飲食店があるが、商人町の食文化は廃れつつある。掘り起こして継承する最後のチャンスで、日向市の食文化として発信していきたい」と意気込む。
 文化庁の補助事業は特色ある食文化の継承・振興に取り組むモデル地域等に対し、その文化的価値を伝えるストーリー構築・発信等を支援し、文化振興や地域活性化を図るもので3年目。九州の団体、自治体で2例目。同協会は来年3月までに、文化財登録を目指した調査を実施。外食での提供や動画の制作などを通して、市内外への情報発信を行う。

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