重粒子線治療、患者紹介などで連携する覚書締結 山形大とバンコク病院(タイ)

重粒子線がん治療装置を視察するバンコク病院の関係者ら=山形市・山形大医学部東日本重粒子センター

 山形大医学部とタイのバンコク病院は5日、同学部が行っている重粒子線がん治療について、患者の紹介などで連携する覚書を締結した。タイでは、体への負担が少なく、高い効果が期待できる重粒子線治療の関心が高まっており、連携を機に医療インバウンド(訪日客)増加につながることが期待される。患者の紹介に関して、同学部が海外の医療機関と覚書を交わすのは初めて。

 同学部東日本重粒子センターは2021年2月に前立腺がんの治療を開始し、22年5月からはさまざまな角度からの照射が可能な回転ガントリーも稼働している。先月末までの治療人数は計976人で、本県をはじめとする東北地方が中心となっている。今年2月には、欧州から訪れた1人に治療を実施した。

 バンコク病院はがんセンターを有する東南アジアの基幹病院。年間2万人ほどのがん患者を診療し、うち15%程度は重粒子線治療が適合する可能性があるという。一方、東南アジアには重粒子線治療装置は整備されていない。タイの銀行に行員を派遣する山形銀行が両者を仲介した。

 バンコク病院の関係者9人は、岩井岳夫センター長らの案内でセンター内を視察した。調印式では、上野義之学部長と、バンコク病院の運営会社のプラマポーン・プラサートオンス社長が覚書に署名した。上野学部長は「重粒子線治療を希望する多くの人に、その機会を提供したい。次世代の治療を世界的に広めるきっかけになる」と期待した。

 患者の紹介が円滑に進むよう、重粒子線治療に関する情報交換や人材交流なども検討している。

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