焼鳥を食べた後でも甘いものは別腹。千葉県市川市にある焼鳥屋『鳥きよ』では、うまい焼鳥の〆に、おいしい自家製デザートを食べさせてくれる。
2月に初めて行ったとき焼鳥を10本ほど食べた後、デザートが3種類あると聞き、嬉しくなって2品も頼んでしまった。焼鳥とデザートのことを書く前に、この店を2021年6月に開業した秋吉亮さんを紹介しよう。
秋吉さんは沖縄出身。那覇で4年パティシエをした後、長野のお菓子屋で2年間毎日ケーキを作り続けた。対面販売もしたかったことから飲食業に転職。
「ご縁があり、千葉市内の焼鳥屋に入店しました。1年目で焼きを担当。最後は店長をつめさせてもらいました」
昨今いろいろな焼鳥屋がある。居酒屋もあれば、寿司屋のような佇まいの高級店も増加中。秋吉さんが修業したのは高級焼鳥屋だった。
その店で3年研さんし独立。
京成本八幡駅から徒歩数分の場所に『鳥きよ』をオープンした。当初ひとりだったことから焼鳥だけを提供していた。
焼鳥と自家製のデザートも提供する焼鳥屋に変貌
2022年11月、心強い助っ人が入店。長野のケーキ屋で一緒に働いていた村松杜志さんだ。
長野で3年パティシエをした後、八王子のイタリアンで働いていた村松さんに「店を手伝ってほしいし、ケーキも焼いてほしい」と頼んだ。
元パティシエの2人がタッグを組み、バージョンアップ。どんな料理を食べさせてくれるのか。『鳥きよ』のおまかせコースを紹介する。
同コースには前菜、地鶏のたたき、季節のサラダ、逸品、箸休めの他、焼鳥は本数(5本、7本、10本)で頼む。
今回5本のおまかせコース(3500円/以下すべて税抜)を注文した。
肉は山形地鶏。130日から150日飼育した地鶏の丸鶏が生産者から送られてくる。
店の冷蔵庫で数日寝かせて熟成させたものを部位ごとにさばき、串にさす。
焼鳥は近火の強火で焼くイメージがあるが、『鳥きよ』はそうではない。
「都内の有名な焼鳥屋では近火の強火で焼く店が多いですよね。でも、それは銘柄鶏を使っているから。
地鶏は水分含有量が少なく、近火の強火で焼くと固くなってしまうため、うちでは遠火で焼きます」
塩をふったり、刷毛で鶏油(ちいゆ)を塗った肉を遠火でじっくりと焼く。それが『鳥きよ』の焼鳥だ。うちわで炭をあおぎこそすれ、焼き台からはほとんど炎があがらなかった。
1本目の焼鳥が焼ける前に「前菜」が運ばれてきた。
今日はマッシュルームのペーストがかかった本熟卵、新タマネギのムース、アスパラと新ジャガのすり流し。
いまが旬の新タマネギのムースは自然の甘みを存分に含んでいた。
続いて「地鶏のたたき」。皮が香ばしくパリパリに焼けたたたきは絶品。
お待ちかねの焼鳥が登場!
ここで1本目の焼鳥が登場。「『だきみ』です。胸肉を皮で包んで焼きました」
遠火で、香ばしく焼いた皮と胸肉を一緒に食べるのは初体験。
2本目は「砂肝のぞうり」。ぞうりと呼ばれる部位だそうだ。
コリコリとした食感が好ましかった。
箸休めの「大根の鬼おろし」と「季節のサラダ」が同時に出された。
焼き台で新ジャガと赤パプリカとブロッコリーを焼いていた。どうするのだろうと思っていたのだが、サラダに盛られるとは。
焼色がついた赤パプリカは目にも美しかった。
3本目は「ネギマ」。
これを焼くとき、秋吉さんが粉末状の何かを炭にかけていた。
「おが屑をかけました。おが屑を燃やすことでネギマに燻した香りをつけます」
北海道の紋別で燻製工房を営む友人がいる。彼の工房ではおが屑を燃やして燻製を作っている。
おが屑を使うと柔らかい香りをつけることができるのだそうだ。
炭火におが屑をかけて焼く焼鳥が一般的なのかどうか知らないが、ややスモーキーなネギマと出会ったのは初めて。
4本目は「赤ナス」。2月に来たときもこれを食べさせてもらった。
ナスはナスでもこの熊本産の赤ナスは、水分を多く含んでいる。噛んだ瞬間、口のなかで水が破裂するような食感を味わえる。他所では体験できない美味。
焼きバゲットに盛られたレバーのパテがこの店のスペシャリテ
逸品の「レバーのパテ」が登場。薄く切って焼いたバゲットにレバーのパテをのせたものだ。
これも前回食べさせてもらった。
じつはレバーが大の苦手。でも、これはうまい。食べる価値あり。
最後は「つくね」。店でたたいた鳥肉を使っているからか、香りもうまい。
これで5本コースが終了。
焼鳥を追加できるが、ここからはデザートタイムだ。
元パティシエが作ったおいしいデザートを賞味する
2月に来たときは、「ガトーショコラ」と「プリン」と「杏仁豆腐」があり、ガトーショコラとプリンを頼んだ。
しばらくすると奥の部屋から生クリームを撹拌する音が聴こえてきた。
ガトーショコラに添えるクリームを村松さんが作ったのだ。
生クリームをホイップする焼鳥屋が存在することに驚いたし、甘すぎないガトーショコラを作るパティシエ経験者がいる焼鳥屋があることにも驚愕した。
……という経験があったので、『鳥きよ』を紹介したいと思った次第。
「今日は『ガトーショコラ』(700円)と『ベイクドチーズケーキ』(650円)を用意させていただいています」
村松さんの説明を聞き、2品ともオーダー。
女性客のほとんどが食事の最後にデザートを注文するという。
タレで焼いた焼鳥を食べて口のなかが甘くなっているところに、デザートを食べてもおくしくないかもしれない。
けれど、この焼鳥屋のデザートは甘すぎないところがいい。
ベイクドチーズケーキには塩が添えられていた。
お好みでチーズケーキに塩をつけて食べてもらおうという趣向だ。
ガトーショコラは、季節によってクリームとアイスクリームを使い分けている。
最後に、村松さんが得意とするケーキは何か尋ねた。
「ひと通り作れます。ご予約いただければ、誕生日ケーキを用意させていただきます」
焼鳥もデザートも好きな女性なら本八幡まで足を運んでほしい。
デザートは好きだけど、焼鳥を食べた経験が少ない淑女もぜひ。
焼鳥もデザートも存分に堪能させてくれるはずである。
【鳥きよ】
住所/千葉県市川市八幡2-2-11
電話/047-314-8336
営業時間/おまかせコース17:00~、19:30~・アラカルト20:30~23:00(L.O 22:30)
定休日/火曜、その他不定休あり 別途500円のチャージ料
(うまいめし/ 中島 茂信)