漫画や同人誌を描く上で欠かせない「描き文字」の種類と表現、デジタルツールで描く方法とは!?【漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本】

漫画や同人誌を描くうえで欠かせない「描き文字」。まず、基本の知識と描き方を身につけましょう!キャラクターの心情や効果音などをより効果的に演出できるようになります。

「描き文字」とは?

「描き文字」とは、画面上に手描きで描かれた文字のことをいいます。音の大きさや高低、勢いも含めてデザインされた文字のことで、以下の2種類に大別できます。

描き文字の種類

【1】実際に聞こえる音を文字化したもの

「擬音」と呼ばれる音のことで、実際にその場面で聞こえる音を描いたものがそれにあたります。擬音を描くことによって臨場感がアップし、読者の没入感をより高める効果があります。

【2】状態や見かけを文字化したもの

もう1種類は「擬態語」と呼ばれるもので実際に聞こえる音ではありませんが、キャラクターの仕草や画面全体の雰囲気を表現する際に使用します。たとえば人々が小さな声で話す「コソコソ」や、無音を表す「シーン」などがそれにあたります。

また、ご機嫌な雰囲気を表す際に使用する音符「♪」の記号も擬態語と似ており、描き文字として描くことがあります。これらの擬態語は、キャラクターがどういう気分で行動しているのか、また舞台となっている場所にどのようなムードが漂っているのかを伝える重要な要素となっています。

表現の種類

描き文字の大きさによって変わる印象

たとえば「ドン」という描き文字を描くとして、大きく響く「ドン」であることを伝えたい場合、画面上に大きく描くのが基本です。しかし机を軽く叩く「ドン」であったら、そんなに大きく描く必要はありません。ただ音量としては大したことがなくても、この「ドン」を聞いた受け手に威圧感を与えたり、精神的に大きな影響を与えたりしたい場合などは、大きく描くといいでしょう。

このように、描き文字をどう描くのかによって音の大きい小さい・高い低い・強い弱いなどを表現することができ、擬態語の場合には微妙なニュアンスの雰囲気や心情までも演出することができるのです。

デジタルツールで描く描き文字

それでは実際にイラスト・マンガ・アニメーション制作アプリCLIP STUDIO PAINT(クリスタ)で描いてみましょう。ここではよく使うツールや機能、効果的なタッチが出せるブラシなどを紹介します。

黒ベタ文字

黒い線で描かれた、あるいは黒で塗りつぶされた太文字が、黒ベタ文字というもっとも基本的な描き文字です。黒は存在感のある色なので、太くなるほど画面上でも強く目立ちます。

【描き方のポイント】 [ペン]ツールの線を重ねて描いたり、囲った内側を[塗りつぶし]ツールで塗りつぶしたりして描きます。

[ペン]ツールでの描き方

【1】 ツールにある[ペン]で、ベースとなる描き文字を描く。

【2】 同ツールで肉付けをして完成。

[ミリペン]&[塗りつぶし]ツールでの描き方

【1】 [鉛筆]ツールで下描きをする。

【2】 [ペン]ツール→[マーカー]グループ→[ミリペン]ツールで、輪郭を描く。

【3】 [塗りつぶし]ツールで文字内をベタにして完成。

筆・フェルトペン風描き文字

筆やフェルトペンといった筆記用具で書いたかのような、かすれのあるのがこの文字です。筆の動いた方向や勢いがよくわかり、読者に激しさや力強さを感じさせることができます。黒ベタ太文字のように外側を描いて塗りつぶすといった工程は経ず、ただ文字を描くだけでできあがるので黒ベタ太文字より手早く描くことができます。

【描き方のポイント】 勢いよく見せるためには、かすれや墨だまりをうまく作ることが大切です。慣れないうちは一度普通に描いたあとで、細いペンを使ってそれらを描き足していきましょう。

[筆]ツール[かすれ墨]での描き方

【1】 [鉛筆]ツールで下描きをする。

【2】 [筆]ツール→[墨]グループ→[かすれ墨]で描く。

[筆]ツール[ややかすれ]での描き方

【1】 [鉛筆]ツールで下描きをする。

※「ややかすれ」はCLIP STUDIO ASSETS からダウンロードできます。https://assets.clip-studio.com/ja-jp/detail?id=1842019

フチのついた文字

黒くて太い文字だと画面が重くなってしまったり、強すぎてしまったりすることがあります。また絵柄と合わない場合もあるかもしれません。そんなときは同じ文字でも、黒いフチがついた白文字を使ってみましょう。白文字は黒文字に比べて軽く、明るい印象になります。また、黒文字が背景や人物のベタと重なって見づらい場合は、文字に白フチをつけ境界を明確にすることで見やすくしましょう。

【描き方のポイント】 フチはレイヤープロパティの「境界効果」で、簡単につけることができます。

黒フチ文字の描き方

【1】 [鉛筆]ツールで下描きをする。

【2】 [ペン]ツール→[マーカー]グループ→[ミリペン]ツールで、輪郭を描いて完成。

白フチ文字の描き方

【1】 黒フチ文字の内側を「塗りつぶし」ツールでベタにする。

【2】 別レイヤーで[図形]ツール→[集中線]で集中線を作成。

【3】 描き文字のレイヤーを選択し、[レイヤープロパティ]パレットの[効果]、[境界効果]の[フチ]を選択。[フチの太さ]でフチの太さを変更できる。

【4】 完成。

その他の描き文字

文字の内側に模様やグラデーションのトーンを貼ることで、文字にさらなるニュアンスを加えることができます。

文字内にグラデーショントーンを貼る方法

【1】 [鉛筆]ツールで下描きをする。

【2】 [筆]ツール→[筆ペン]で、輪郭を描く。

【3】 [自動選択]ツールで文字の内側を選択(斜線で示した部分を選択していく)

【4】 グラデーション用の別レイヤーを作成したのち、[グラデーション]を選択。[サブツール]パレットの[グラデーション]→[描画色から透明色]を選択。

【5】 マウスでドラッグすると、始点=描画色、終点=透明色のグラデーションができる(この場合は下から上にドラッグしている)。ドラッグする長さによって、グラデーションの変化量が変わる。

【6】 最後に[レイヤープロパティ]パレットの[効果]の[トーン]を選択。グラデーションがトーン化される。トーンのドットの大きさは[トーン線数]で変更できる。

『漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本』はこんな人におすすめ!

・描き文字を上手にかきたい! ・描き文字のレパートリーを増やしたい! ・シチュエーション別のかき分け方法を知りたい
と感じている方には大変おすすめな本です。

文字の大きさや、字体、レイアウトなど作風やシチュエーションに合わせてえがく描き文字は、イラストではなく文字なので単純そうにみえますが、奥が深いため苦手意識を持つ方も多くいます。本書では、基本的な描き文字のかき方が分からない初心者の方、ある程度はかけるけど場面ごとのかき分けが得意ではない方、効果音のレパートリーが少なくて悩んでいる方、文字の配置やレイアウトが苦手な方などに向け、描き文字に対するさまざまなお悩みポイントをおさえた一冊です。

漫画や同人誌をかく上で、必要不可欠なものが「描き文字」

描き文字は、キャラクターの心情や効果音などストーリーをより効果的に演出するために必要ですが、SNSなどでは描くのが難しいと言われています。そんな描き文字を東京デザイン専門学校さん協力のもと、本当に使える描き文字だけをわかりやすく丁寧に解説します!

気になる中身を少しだけご紹介!さまざまなシチュエーションがある食事のシーン!描き文字を組み合わせるだけで伝わり方が大きく変わる!?

擬音語、擬態語の多い食事シーンはひと工夫でよりリアル感を演出

食事についてはさまざまな擬音語、擬態語があります。メインビジュアルは「がつがつ」「パクパク」と、ものすごい勢いで食べている女の子の絵。この絵は一見「がつがつ」だけで成立しそうですが、「パクパク」を入れることにより、ものすごい勢いで口に食べ物を放っていることが伝わる絵になっています。また描き文字が前面に出ており人物の顔周りに置かれていますが、これにより動きの激しさが表現されています。食事はおもに口で行う動作なので、描き文字は息づかい同様、顔や口の周りに描くようにしましょう。

下の図は食べる状況に合わせて黒文字、白文字を描き分けています。「ゴクン」は液体を飲み込む音ですが、食べたい気持ちを表現する際にも使えます。「ゴ」の濁点や「ン」の一部が円形になっており、これにより読者にポジティブな印象を与えています。「チュルルルー」「ズズー」などは麺類を食べている音。「パクパク」のようにただ口に入れるのとは違い、時間的な幅のある動作なので、音引きを長めに伸ばすことでそれを表現しています。

静かなシチュエーションも「描き文字」をプラスしてもっと伝わる表現に!

描き文字をどの部分に描くかで読者が状況を理解できる

静かな状況のとき、実際は音がないわけですが、マンガではそれも描き文字で表現します。無音の状態を表す表現法のなかでも有名なのが、メインビジュアルの「シーン」ではないでしょうか。この「シーン」は静かな状況ですが、かなり大きく描かれています。それはこの絵がギャグシーンであり、そのば全体が静まりかえっていることを明確に示したいから。またこの描き文字を画面上部に描くことで、この教室に教師以外誰もいないことを読者が瞬時に理解できるようになっています。

下の図には、静寂のなかで聞こえる小さな音も掲載。小さな音を文字でも小さく描くことで、その音がわずかに聞こえるくらい静かであることを読者に伝えることができます。時計の音「カチコチカチコチ」、足音「カツーン コツーン」などが代表的な例ですが、ほかにもいろいろあると思います。また緊張して言葉が出ない状態の「カチン コチン」などは、キャラクターの緊張度に合わせた大きさで描くようにしましょう。

★文字だけで印象は操作できる!? ★デジタルツールとアナログ道具で描く描き文字 ★漫画でよく見る「ときめく」の描き文字の種類とは ★音を奏でる時に使う描き文字とは?
などなど気になるタイトルが目白押し!

本書は文字例の多さはもちろんのこと、描き文字を漫画に当て込んだ例も豊富に取り入れて解説しています。実際どのくらい描き文字は漫画の表現力を高めるのか、ストーリーの印象が変化するのかを確認しながら、読者の皆さまが自分の作品にも取り入れていただけると嬉しく思います。

【書誌情報】
『漫画のプロが全力で教える「描き文字」の基本』
著者:東京デザイン専門学校

漫画や同人誌などをかく上で、キャラクターの心情や効果音などストーリーをより効果的に演出するためには、必要不可欠な「描き文字」。文字の大きさ、字体、レイアウトなど作風やシチュエーションに合わせてえがく描き文字は、文字なのでイラストより単純そうにみえて奥が深いゆえ、苦手意識を持つ人もいます。基本的な描き文字のかき方からわからない人、ある程度はかけるけど場面ごとのかき分けが得意ではない人、効果音のレパートリーが少なくて悩んでいる人、文字の配置やレイアウトが苦手な人など、本書はそのような描き文字に対するさまざまなお悩みポイントをおさえた一冊です。

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