まるで宇宙を漂うクラゲのような“みずがめ座”の銀河 ハッブル宇宙望遠鏡で撮影

こちらは「みずがめ座」の方向約7億光年先にある渦巻銀河「JO206」です。JO206は銀河団「IIZW108」に属しています。渦巻腕(渦状腕)は若い星々が放つ青い輝きと電離した水素ガスが放つ赤い輝きの斑点に彩られており、どちらも星形成活動が起きていることを示しています。その渦巻腕は画像の右下へと引っ張られているような形をしており、JO206はまるで真っ暗な海を泳ぐ一匹のクラゲのようにも見える姿をしています。

【▲ ハッブル宇宙望遠鏡で撮影された渦巻銀河「JO206」(Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team)】

欧州宇宙機関(ESA)によると、JO206の観測は「Jellyfish Galaxy(クラゲ銀河)」と呼ばれるタイプの銀河における星形成に関する研究の一環として行われました。クラゲ銀河とはクラゲの“触手”のような筋状の構造を持つ一部の銀河のことで、“触手”は銀河からゆっくりとガスが剥ぎ取られたことで形成されたと考えられています。

銀河の集合体である銀河団では、銀河と銀河の間が銀河団ガスで満たされています。銀河団の中を移動する銀河がこのガスから動圧(ラム圧)を受けて自身のガスを少しずつ剥ぎ取られた結果、移動する銀河の後方に続く“触手”が形成されたのではないかというわけです。一方へ引っ張られているような形をしたJO206の渦巻腕や、画像右下に向かってかすかに伸びている航跡も、そのようなプロセスで形成されたとみられています。

ESAによれば、クラゲ銀河の“触手”における星形成活動を研究者が分析した結果、“触手”の星形成活動には銀河の円盤部の星形成活動と目立った違いが見られないことがわかったということです。冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」で取得したデータ(近紫外線・可視光線・近赤外線のフィルター合計6種類を使用)をもとに作成されたもので、ESAからハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として2023年6月5日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, M. Gullieuszik and the GASP team
  • ESA/Hubble \- Under the Sea

文/sorae編集部

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