奈良の平城宮跡南側で絶滅危惧種のコアジサシが今年も巣作り 子育て奮闘中

今年も営巣が確認されたコアジサシ=奈良市(岡口晃子さん撮影)

 奈良市の平城宮跡南側工場跡地で、今年も環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている野鳥「コアジサシ」の営巣が確認された。産卵、子育ての時期を迎えている。同市内は2日、大雨・洪水警報が発令される大雨となり影響が懸念されたが、6日午前中にも成鳥14羽とヒナ6羽を確認。日本野鳥の会奈良支部の中元市郎支部長(69)も「ほっとした」と無事な生育を祈っている。

 コアジサシはチドリ目カモメ科の夏鳥。全長は約30センチで翼を広げると50センチほど。背は低く、体や尾は白や黒、グレー。営巣の場所として砂礫地を好む。

 営巣が確認された工場跡地は整地され、北側が駐車場として活用されているが、南側は車や人の侵入もなく、一部で草が茂り、水たまりもある。数年連続でコアジサシの営巣が確認されており、今年も近くの池や川から小魚をくわえて巣に戻る様子や、親鳥の後を追って歩くヒナの様子などが確認されている。

 2日の大雨後もヒナたちは無事だったよう。中元さんは「コアジサシは河川敷に巣を作ることが多く、近年は突然のゲリラ豪雨で巣も流されるなどして個体数も減っている」と指摘。「奈良は巣立ち率も高く、工場跡地も天敵がいないわけではないが、周囲に人がいることで襲われにくい側面もあるのでは。こうした自然環境を守ることができれば」と願っている。

 また、跡地周辺にはコアジサシを一目見ようと望遠鏡やカメラを手に歩く野鳥愛好家らの姿が見受けられる。

 堺市から訪れた高齢の夫婦は「(野鳥の撮影は)夫婦で共通の趣味。ただ、この跡地も今後はどうなるか分からないと聞いている。この自然を残してほしいですね」と話していた。

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