保育園児の使用済み紙おむつ「園で処分」費用に課題 今なお「保護者持ち帰り」の園も

紙の連絡帳に代わり、園児の体調や出来事をタブレットで入力する保育士。保護者はスマートフォンで便の回数や状態を確認できる(25日午後、栗東市小野・葉山東幼児園)

 子どもの体調確認などを理由に、公立保育園での使用済み紙おむつを保護者の持ち帰りとしていた滋賀県内の市町が順次、園で廃棄する方式に切り替えている。処分費が課題としていた自治体で予算確保が進むなどし、園で廃棄する自治体は2023年度中に16市町になる見込みだ。ただ、残る3町では見通しが立たないほか、私立園では費用負担が重荷にもなっており、国による支援を求める声が上がっている。

 使用済み紙おむつを自宅で処分するよう求めている園や自治体は、保護者が園児の便や排せつ回数を確認できることなどを理由に挙げている。一方、保護者からは「重くてかさばる」「臭いが気になり、買い物に寄りづらい」などの声があった。京都新聞社が22年4~5月に県内全19市町に聞いたところ、全ての公立園で園廃棄に切り替えた自治体は大津市と草津市のみだった。

 5月、県内市町に再取材すると、彦根市など10市町が今年4月までに園廃棄に切り替えていた。長浜市など4市は本年度中に園での廃棄にするとしており、計16市町が保護者の持ち帰りを取りやめることになった。

 22年11月から園での廃棄に切り替えた栗東市は、23年度から園児の健康状態などのやりとりに専用のアプリを導入した。おむつの持ち帰りを求める理由の一つとなっていた便の確認は、保育士がタブレット端末に園児の排便した時間や回数、「良」「軟」など状態を入力し、保護者はスマートフォンなどで確認できるようにした。

 市立葉山東幼児園に2歳児を預ける会社員竹端美嶺さん(31)は「おむつを持ち帰っても(中身は見ずに)捨てるだけだった。スマホだと家族で情報をシェアできる」と利点を話す。同市はアプリ導入に合わせて紙の連絡帳をやめ、保育士の負担軽減にもつなげた。

 「園での処理に切り替えたいが、コスト面が課題」としていた甲賀市は、22年度の補正予算165万円で公立14園分に大型ごみ箱を導入。23年度から園での処理に移行するにあたり、私立園への処分費補助約500万円も予算化した。

 

 全国の市区町村に調査している「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」(大阪市)によると、22年度は8割以上が「持ち帰りあり」と回答し「ワースト1位」となった滋賀県は、23年度は4割弱に減少して全国15位になるという。23年4月に初めておむつの処理状況を調べた県によると、私立園でも81%が保護者の持ち帰りをやめていることが分かった。

 ただ、23年度も保護者持ち帰りを続ける3町は財政規模が小さく、私立園も処理費用が負担になっている。23年1月に使用済みおむつは保育園での処分を推奨するとした厚生労働省は、保管用ごみ箱の購入に保育環境改善を目的とした補助金を使用できると通知したが、県子ども・青少年局は「国が自園処理を推奨しているのに、処理費用が自治体や施設に委ねられているのは問題だ。国の補助金は使いにくいという声もあり、費用を上乗せするなどの支援が必要ではないか」としている。

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