被災者の声を聞き支援に結び付ける「つなぎ手」、各地の活動事例集を発行 神戸のNPO法人

冊子を紹介するまち・コミュニケーション代表理事の宮定章さん=神戸市長田区御蔵通5

 阪神・淡路大震災を機に全国の被災地を支援する認定NPO法人「まち・コミュニケーション」(神戸市長田区)が、被災者の声を聞いて支援に結び付ける各地の「つなぎ手」の活動を冊子にまとめた。東日本大震災や熊本地震などの被災地で活動する17の団体・個人を紹介。11日午後6~8時、発行を記念したシンポジウムをオンラインで開く。

 冊子は「被災地で活躍する『つなぎ手』活動事例集」。日本財団(東京)の助成金を活用し、同法人メンバーと有識者らが2020年秋から各団体・個人の拠点を訪ね、活動を聞き取った。冊子では、それぞれが専門家と連携し、被災者の生活再建を支援する活動やメッセージを紹介している。

 一般社団法人「日本カーシェアリング協会」(宮城県石巻市)は、東日本大震災で約6万台の車が被災した同市などで、寄付で集めた車を活用。地域で共有して高齢者の外出を支援したり、生活困窮者らへ貸し出したりしている。「意識するのは『相手が求めていることは何か』ということ。そこを忘れずに動くと、長続きするつなぎ方ができる場合が多かった」とする。

 認定NPO法人「フードバンク岩手」(盛岡市)は東日本大震災を機に設立し、岩手県内で生活に困る人に食料を支援。「住居の被害に関係なく悩みを抱え、困っている人ほどSOSを出せない」とし、一人一人に寄り添って関係機関につなぐ重要性を訴える。他に、集落の復興まちづくりを支える熊本県西原村のNPO法人「故郷復興熊本研究所」、北海道厚真町や熊本県益城町の町職員も紹介する。

 まち・コミュニケーション代表理事の宮定章さん(47)は「被災者と信頼関係をつくって関わる、つなぎ手の存在価値は大きい」と強調。今後は冊子に関連した勉強会やツアーも計画中で「事例を知って『私もできることがある』と感じ、地域内で動き出すきっかけになれば」と話した。

 冊子はA4判85ページで、希望者にはPDFファイル形式で無料配布。シンポではメンバーが調査内容を報告し、討議や意見交換をする。参加費は一般1200円。大学生、高校生無料。定員100人。

 チケット販売サイト「Peatix(ピーティックス)」から申し込む。まち・コミュニケーションTEL078.578.1100(井川朋宏)

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