経産省「デジタルライフライン全国総合整備計画」、ドローンや自動運転の未来への道標を示す

官民で集中的に大規模な投資を行い、自動運転やAIのイノベーションを急ぎ社会実装し、人手不足などの社会課題を解決してデジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成に貢献するとしている。

多様な主体が提供するサービスやシステムがつながり、社会全体として効率的・合理的に機能するよう、政府・民間企業・大学等のプロフェッショナルがデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC、※独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に設置)に集まり、アーキテクチャや推奨仕様を検討・提示し、関係省庁や産業界で足並みそろえた投資を行っていく。

サイバー空間で完結しないデジタルサービスの例 ※赤枠は特に物理インフラが必要な部分

デジタルによる社会課題解決・産業発展

人口減少が進むなか、安心して暮らし続けられる「地域生活圏」の形成を下支えするため、セキュリティの確保を前提としつつ、ドローンを使った生活必需品の配送、自動運転によるデマンド交通サービスなど、人手に頼らないデジタルサービスにより距離と時間の制約を大幅に低減し、買い物、移動など住民の暮らしを支えるサービスを持続可能なものとしていく。

平時は、生活必需サービスが相次ぐ撤退している中、人手を介さず自動的に生活必需品を配送する。平時のサービスを転用して迅速に被害・避難経路を把握し、救援物資を供給する。

平時出所:国土交通省及び総務省「過疎地域等条件不利地域におけ る集落の現況把握調査」2016年3月をもとに林野庁作成
災害時

自動運転車やドローン、AI等を最大限に活用できる地域を全国に広げていくことで、働き手はより生産性の高い仕事に従事できるようになり、賃金の向上にも繋がるとしている。

共通的なサービス基盤としてのデジタルライフラインの整備やこれを活用する自動運転車・ドローン・AI等の普及により、新たなデジタル産業の興隆を促し、国内投資・イノベーション・所得拡大の好循環にも繋がる。

点から線・面へ:実装範囲の拡大
デジタルライフラインの構成要素

人手に頼らないデジタルサービスが早期に持続可能な形で成立するためには、業種横断で汎用性の高いインフラやサービスを活用することで稼働率を向上し(マルチドメイン)、一度に複数目的を束ねて達成し(マルチパーパス)、人の介在をなくして複数のインフラやサービスを自在に組み合わせることにより、事業経済性を確保する必要があるとしている。

To-Be 業界横断のDX

自動運転車やドローン等を運行させるモビリティ運行の観点と、自動運転車やドローン等を活用してサービスを提供するモビリティサービスの観点の両面から検討を進めていく。

[モビリティサービスの最適化]

  • 需要と供給力を踏まえて、人・物の移動が最適となるオペレーションやそれを実現するシステム(需給最適化)の検討を行う。
  • 移動先のサービス、人流・物流サービス、自動運転運行サービスの役割分担について検討を深めていく。
需要最適化につながる仕組みを検討

[モビリティ運行の最適化]

  • ハード・ソフト・ルールといったインフラを充実させることで、自動運転車の開発から運行までの安全性・信頼性の向上やコスト低減・ビジネス機会創出を促す。そのためハード・ソフト・ルール・モビリティの役割分担について検討を深めていく。
アーリーハーベストプロジェクトを通じて自動運転車やドローン等が安全かつ効率的に運行する仕組みを社会実装

現在は、モビリティの輸送計画に合わせて人・物が移動するケースも多い。今後は、人手不足が深刻化し、自然災害も激甚化する中で、人・物の移動の効率性・強靱性を一層確保する必要がある。そのため、ヒト・モノの移動のニーズに関するデータをもとに最適な輸送サービスが自動的に決まり提供される仕組みを検討する。

物流分野における労働力不足が顕在化しており、担い手の高齢化も進んでいる。中長期的な人口減少の中でも効率的で持続的な物流を維持するために、デジタル化・標準化等を通じた共同輸配送システムである「フィジカルインターネット」の実現に向けて取り組む。

[人流・物流・商流に関するデータ連携基盤の社会実装]

様々な人流、物流のニーズを集め、複数の企業やモビリティを跨いで最適なサービスを提供できる仕組みを検討する。

[フィジカルインターネット]

中長期的に人口が減少する中、更なる物流効率化を進めていくためには、

  • デジタル化により物資や倉庫・トラック等の物流情報等を見える化し、
  • 標準化された容器に詰められた貨物を、
  • 複数企業が共同で活用できるネットワーク(フィジカルインターネット)の構築が重要

2040年までのフィジカルインターネット実現に向けたロードマップを2022年3月に策定・公表し、業種・分野を超えたネットワーク構築を推進する。

アーリーハーベストプロジェクト

(1)ドローン航路の設定

点の取り組みを線で結び、ドローンの目視外の自動飛行による点検や物流の自動化を普及させることを目指す。ドローン航路の設定によりドローンの安全かつ高速な運用が可能になる。

送配電網等の既存インフラを活用して将来的には地球1周分(約4万km)を超えるドローン航路の設定を目指す。2024年度頃までに埼玉県秩父エリアの送電網等において150km以上の航路を設定して利用開始。ドローン航路も活用して、ドローンを活用した点検や配送等の普及を後押しする。

サービス例
デジタルライフライン例
ドローン運行に関する事業・インフラの整備イメージ

(2)自動運転支援道の設定

自動運転車により人手不足に悩まずに人や物がニーズに応じて自由に移動できるよう、ハード・ソフト・ルールの面から自動運転を支援する道を整備し、自動運転車の安全かつ高速な運用を可能とする。

※ここでは、ハード・ソフト・ルールの面から自動運転車の走行を支援している道を「自動運転支援道/レーン」とする。その中でも、専用又は優先化をする場合には「自動運転車用道/レーン」と呼ぶ。

2024年度に新東名高速道路の一部区間等において100km以上の自動運転車用レーンを設定し、自動運転トラックの運行の実現を目指す。また、2025年度までに全国50箇所、2027年度までに全国100箇所で自動運転車による移動サービス提供が実施できるようにすることを目指す。

サービス例
デジタルライフライン例

(3)インフラ管理のDX

社会インフラの空間情報を様々な政府・企業の間で相互に共有することで、平時は作業の自動化やリソースの最適活用を、災害時はインフラ会社間の情報共有等による復旧の早期化を目指す。

2024年度頃に、関東地方の都市(200km)で地下の通信、電力、ガス、水道の管路に関する空間情報をデジタル化して空間ID・空間情報基盤を介して相互に共有できるようにすることを目指す。将来的には、地域を拡大するとともに、地上設備や海上の船舶等に関する情報のデジタルツイン構築に取り組む。

サービス例
デジタルライフライン例

デジタルライフラインの整備

デジタルライフラインの概要
点から線・面へと実装するための支援強化の検討(案)

ハード面の検討方針

アーリーハーベストプロジェクト等を通じ、自動運転車やドローンの運行を支援する環境情報の収集・配信を実現するための低遅延の情報通信網・情報処理基盤や、ヒト・モノの乗換・積替、モビリティの充電・駐車を行うハブとなる拠点を整備する。その際、地域のニーズに応じてインフラを自由に組み合わせることができるよう、インフラの標準規格や推奨仕様を整備する。

フィジカルとサイバーを接続する情報通信網・情報処理基盤
交流・物流のハブとなる拠点

ソフト面の検討方針

地理空間情報活用推進基本計画も踏まえ、3D地図等の空間情報のデータを整備するとともに、検索インデックスとして3次元空間IDの規格を整備し、多数のシステムで分散的に空間情報を収集・統合・配信・更新する3次元空間情報基盤や運行管理データ連携基盤等を構築する。さらに、各省庁の地理空間情報を扱うシステムとの円滑な連携を推進する。

また、自動運転やAIの実現に際して、機微な情報を扱う場合や膨大なデータを高速に処理する場合には、官民ともに秘匿処理が可能な超分散コンピューティング基盤を用いることを検討する。

データ連携基盤。空間情報を新鮮な状態に維持するため、新しい情報に簡単に更新できる仕組みも構築する
秘匿処理が可能な超分散コンピューティング基盤

ルール面の検討方針

自動運転車やドローンの運行に関する安全性を担保するため、運行に関わる各システムのデータを可視化して制御を自動化・最適化するとともに、リスクマネジメントを促すインセンティブ設定やヒヤリハットを含む事故時の原因究明や対策を即座に講じるためのガバナンスの仕組みを整備し、イノベーションを促進するアジャイルガバナンスを実践する。

企業の営業秘密やデータ主権への配慮、相互運用性の確保など、複数の企業をまたいだデータ共有を行うデータ連携基盤の担い手には一定程度の公益性が求められると想定されるため、これを担保する仕組み(例:公益デジタルプラットフォームの認定制度)を創設する。

データを活用したガバナンスの促進の具体例(安全な運行経路の設定)

公益デジタルプラットフォームの1.安全性・信頼性、2.相互運用性、3.事業安定性を担保する仕組みとして認定制度を創設する。

認定制度の創設。公益デジタルプラットフォームは1者に限らない。

デジタルライフラインの面的展開に関する検討の進め方

2024年度から先行地域での面レベルの社会実装開始に向けて、2023年度中にデジタルライフラインの推奨仕様等を整理する必要がある。現場の実情を踏まえた検討を行うべく、面的展開を将来的に考えている自治体や企業等と連携して、仮説の立案や検証を行う。

仮説の立案や検証

群馬県では、路線バスの自動運転実証実験(前橋駅~中央前橋駅)を実施(前橋市・群馬県)。今後の目標として他路線への展開(前橋駅~県庁)を検討(群馬県)している。

他路線への展開や多様なモビリティサービス導入を検討している例

中長期的な社会実装計画

基本コンセプト「点から線・面へ」「実証から実装へ」

[点の実証から実装へ]

[線の実装]

[面の実装]

「デジ活」中山間地域/ドローンサービス/自動運転車サービス

  • 国の関連事業で、相互に案件の優先採択を行い、運営主体からサービス、インフラまで全てが揃う地域(面)を創出することで、実証から実装(サービス継続)に繋げ、地域生活圏の形成を加速。
    例:自動運転による地域公共交通実証事業の採択案件のうち、中山間地域で実施するものについては、地元自治体、都道府県警察、自動の運転事業者、農村RMO、電力事業者等による地域協議体等を設定し、規格化されたインフラ整備等を行う。
    例:DADCが関係省庁・産業界と連携して整理する技術仕様等に準拠する案件を優先採択。
  • 先行地域(面)で確立したノウハウやメニューを他地域に横展開
参考:自動運転・ドローン飛行レベルの想定。自動運転は走行環境に応じて様々なレベルを、ドローン飛行はレベル3・4の運行を想定する

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