社説:原油減産延長 さらなる物価高招くか

 物価高がさらに進むのではないか、との懸念が強まりそうだ。

 主要産油国でつくる「石油輸出国機構(OPEC)プラス」の閣僚級会合が開かれ、現在協調して取り組んでいる原油の減産を、2024年末まで1年間延長することで合意した。

 世界経済が先行き不透明となり、下落基調にある相場を底上げするためだ。

 原油価格が上昇すると、日本では幅広い製品やサービスの値上げにつながろう。今後の推移を、注視していきたい。

 OPECプラスは、サウジアラビアをはじめとするOPEC加盟国に、ロシアなど非加盟の産油国を加えた連合体である。産油量を足並みそろえて調整し、原油価格の安定を図っている。

 新型コロナウイルス流行による世界経済の失速を受けて、20年5月に協調減産を開始。コロナ対策の規制緩和に伴い21年7月には、いったん増産を決めたが、中国の景気減速もあって昨年11月から再び減産に踏み切った。

 これを継続し、24年1月から同年末までは、生産量の合計を日量4千万バレル余りに設定する。現在の合意より、日量140万バレル程度減るとみられる。

 サウジやロシアなどの自主減産も継続される。

 国際的な価格の指標となるニューヨーク原油先物相場は、昨年3月に1バレル=130ドル台まで高騰したものの、最近では一時60ドル台まで落ち込んでいた。

 それだけに、一定の価格を維持したい産油国としては、やむを得ない措置なのかもしれない。

 ウクライナに侵攻し、戦費を原油輸出で賄うロシアは追加の減産に消極的で、これにサウジなどは難色を示したともされるが、産油国の結束を優先したのだろう。

 ただ、原油価格が上昇すると、世界経済が一段と低迷するという悪循環を招きかねない。

 産油国は、順当な価格というものを模索してほしい。日本など消費国も、そのことを強く訴えていくべきだ。

 今回の合意によって日本では、特にガソリンなどの燃油が、再び値上がり傾向となる可能性が出てくる。

 政府は、価格を抑制するため、石油元売りに支給している補助金を、今月から段階的に縮小し、9月末で終了する方針だが、見直しを求める声も上がりそうだ。

 原油への依存を少なくするのが大事なことを念頭に置きながら、各方面における影響をよく見極めて対応してもらいたい。

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