天籟寺川・ホタルの里 『ピカッ』っと光ったら「ホタル飛んでます!」【北九州市戸畑区】

梅雨に入るとすっかりホタルのシーズンですね。各地でホタル祭りがおこなわれているところもあるようです。

戸畑区の天籟寺川にある鞘ヶ谷ホタル公園でも「鞘ヶ谷ホタルまつり」が5月27日に行われました。今回は祭りが終わって静かになった天籟寺川のホタルの様子を見てきました。

どぶ川となった天籟寺川にかつてのようにホタルが舞う姿をよみがえらせたい

鞘ヶ谷ホタルの里公園に隣接する天籟寺川のホタルの里は「鞘ヶ谷ホタルの里づくりの会」の皆さんによって環境整備されてきました。月1度の清掃に加え、蛍のエサとなるカワニナの採集や生態についての勉強会などホタルの生育環境づくりに長く尽力されています。

きっかけは戦後にさかのぼります。終戦から5年後の昭和25(1950)年くらいまで、天籟寺川は蛍の飛び交う清らかな川だったようですが、戦後の高度成長時代には生活排水とごみで「どぶ川」となってしまったとのこと。

その状態が30年ほど続いた昭和57(1982)年、「天籟寺川を以前のようなホタルの飛び交う川へ戻したい、自然を大切にする心を育てたい」という運動が盛り上がり、ホタル飼育の取り組みが始まったと、地域の掲示板にはそのように会の成り立ちが書かれていました。

今ではすっかり昔のように美しい水底を見せる鞘ヶ谷付近の天籟寺川

ホタル祭りが始まったのは平成3(1991)年。その後、平成12(2000)年ごろからホタルやカワニナが定着し、平成18(2006)年には念願のホタルの乱舞が見られたとのことでした。

新幹線トンネルからの湧水によって川の環境が安定

運よくホタルの里づくりの会、会長の山下さんに話を聞くことができました。

このホタルの環境が戻ってきた一つの大きなファクターは「JR西日本の新幹線湧水」の活用だということです。ここ鞘ヶ谷にはちょうど新幹線のトンネルが通っており、そこから湧き出すトンネルの水はかつて時間を区切って流していましたが、JR西日本にお願いして常時流すようにし、トンネル点検の時だけ止めるようにしてくれたおかげで安定的に川に水が流れ、ホタルやカワニナが定着するようになったとのこと。今では通常の湧き水は約3割、新幹線からの湧水が7割ということです。

新幹線のトンネルからの湧水で常時清らかな水が流れている

多くの人たちの努力のおかげでホタルは戻ってきました。その業績が高く評価され、「鞘ヶ谷ホタルの里づくりの会」は国土交通省、国務大臣内閣府特命担当大臣、福岡県知事などから何度も表彰を受けています。

ホタルの里は行政などによっても手厚い保護を受けています。ホタルの繁殖期の5月中旬から6月上旬くらいまでの1か月間、川のそばの明るい街灯は一時的に消灯されています。

また鞘ヶ谷ホタル公園入口にあるホタルを模ったアーチは1959年に結成された北九州戸畑ライオンズクラブが結成40周年記念として1999年に寄贈したものです。このアーチは実はホタルの飛翔している時期だけ点滅しています。

もし「ピカッ」っと点滅しているのを見かけたらそれはホタルが見学できるチャンスです!

山下さんのお話によると「今年は寒い日が続いたので、ピークは少し遅いかも知れない」ということでしたが、5月の最終日に筆者が訪れた際には90匹近くは飛んでいたようです。

天籟寺川最上流「ほたるばし」から下流に向かって筆者が撮影したホタル

その前日、筆者が小熊野川の北九州市ほたる館周辺で観察した際にも200匹程度は出ていたようですが、雨のためにじっと留まって、光っている姿はあってもあまり飛び交う姿は見られませんでした。

ほたる館周辺の小熊野川を上流に向かって撮影

ホタルの飛翔状況については北九州市ホームページから確認できます。

また、北九州市のホームぺージの情報には令和3年の実績までしか掲載されていない貫川ですが、筆者が6月第1週の週末に目視確認したところ、中流上流支流含めるとおおよそ200匹くらいは光っていました。

貫川沿いの樹木で羽を休めるホタル

梅雨の晴れ間の散歩に健康づくりとホタル見物 一石二鳥のコース

鞘ヶ谷ホタル公園はまた夜宮公園を結ぶ「とばた1万歩コース」のスタート・ゴール地点でもあります。

梅雨の晴れ間に、緑多く美しくよみがえった天籟寺川を歩いて健康づくりができ、ホタルも見物できる一石二鳥のよいコースだと感じました。

【鞘ケ谷ホタル公園】
■所在地/北九州市戸畑区西鞘ケ谷町24

※2023年6月7日現在の情報です

(ライター・いるかいる)

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