フォード・フォーカスSTが破竹の快進撃。元王者サットン連勝で早くも今季6勝に/BTCC第4戦

 今季開幕以降、フォード陣営の古豪モーターベース・パフォーマンスが猛威を振るう2023年のBTCCイギリス・ツーリングカー選手権は、6月3〜4日の週末に同国随一の高速トラック、スラクストンでの第4戦が開催された。ここでも前年度予選最速を記録していた元王者アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が躍動し、今季のBTCC全予選で“陣営無敗”を継続した男が、オープニングのレース1とレース2を連覇。直近の3イベントで9戦6勝という破竹の快進撃を続けている。

 イングランドが誇るハンプシャー州の“最速サーキット”で始まった週末は、フォード陣営の顔ぶれ同様にここを得意とするジョシュ・クック(ワン・モータースポーツ・ウィズ・スターライン・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)が、FP1、FP2と連続トップタイムを叩き出し、今季チャンピオンシップの流れを変えるか……との期待が集まった。

 しかし前戦勝利により、グリッド上の誰よりも共通ハイブリッド機構によるエクストラパワーの割り当てが少ないにも関わらず、元王者の地力を見せたサットンが“ここぞの場面”でスピードを披露。皮肉にもチームメイトのダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)がトレッド剥離で赤旗中断の起因となるなか、クックとのタイムバトルを制して2年連続スラクストンでのポールポジションを獲得した。

「どうやらNAPAレーシングUKのフォード・フォーカスSTは、ふたたびレールの上にあるようだね。そんな完璧なフィーリングはこうしたツーリングカーではあまり得られない僥倖なんだ」と、今季予選で完全制覇記録を継続するチームでエースを務めているサットン。

「僕にも長男が産まれ、肉体的にも精神的にもとても良い状態にある。パッケージのすべてが機能しているが、トム(・イングラム)とジョシュ(・クック)が真後ろにいるし、明日は簡単ではないだろう。粘り強く、すべてを整理整頓してラインを離れることができる限り、良い状態になるはずだよ」

予選に向けジョシュ・クック(ワン・モータースポーツ・ウィズ・スターライン・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)に期待が集まったが、惜しくも3番手。その背後にはルーキーのマイキー・ドーブル(カーストア・パワーマックスド・レーシング/ヴォクスホール・アストラBTCC/左下)が飛び込んだ
前戦で不運が連鎖し、得意のスラクストンで巻き返しを期したダン・カミッシュ(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)だったが……
アシュリー・サットン(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)がレース1で快適な“ライト・トゥ・フラッグ”を達成
ディフェンディングチャンピオンのトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)は、終始クックとのバトルを強いられる

■「クルマに加えた多くの変更が有利になった」と破顔一笑のサットン

 その予言どおり、最前列から発進したサットンは、ディフェンディングチャンピオンのトム・イングラム(ブリストル・ストリート・モータース・ウィズ・エクセラー8/ヒョンデi30ファストバック Nパフォーマンス)をスタート直後から引き離し、レース1で快適な“ライト・トゥ・フラッグ”を達成。

 続くレース2も、序盤から他車より秒単位で速いラップを刻んだサットンが連勝を飾り、イングラム、クックとまったく同じ顔ぶれのポディウム中央に登壇。これでBTCCに週末3ヒート制が導入されて以降、3週連続で2勝を挙げた初のドライバーとなった。

「また良い週末になったね」と破顔一笑のサットン。「僕らが冬の間にクルマに加えた変更の多くは、主に中高速に焦点を当てていた。それこそが僕らを有利にするだろうと予測していたが、そのとおりになったんだ。クリーンエアだったレース1と2はうまくいきすぎたぐらいだし、リバースのレース3ではバランスに苦しんだけどね」

「次戦のオールトンパークも僕らが強くなれるサーキットだと思うし、白紙の状態でそこへ行き、良い位置に自分自身を置けるよう努めるよ」

 週末の最終ヒートとなったリバースグリッドのレース3は、その前戦で他車と衝突し、3グリッド降格ペナルティを受け5番グリッド発進となっていたダニエル・ロウボトム(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が、クルマの戦闘力を見せつけるようなレースを披露。

 オープニングで4番手として、続くラップでリッキー・コラード(TOYOTA GAZOO Racing UK/トヨタ・カローラGRスポーツ)を仕留めると、5周目にはエイデン・モファット(ワン・モータースポーツ・ウィズ・スターライン・レーシング/FK8型ホンダ・シビック・タイプR)を、10周目にはついに首位アダム・モーガン(チームBMW/BMW 330e Mスポーツ)のインを刺し、スラクストンでのフォード・フォーカスST全勝を確実にし、自身の今季初勝利を手繰り寄せた。

 続く2023年BTCC第5戦は、選手権リードを拡大したサットンが言及したとおり、フォーカスSTにもフィットするであろうオールトンパークで、6月17~18日に開催される。

レース2も、序盤から他車より秒単位で速いラップを刻んだサットンが連勝を飾った
これでサットンは、BTCCに週末3ヒート制が導入されて以降、3週連続で2勝を挙げた初のドライバーとなった
レース3では3グリッド降格ペナルティを受け5番グリッド発進となっていたダニエル・ロウボトム(NAPAレーシングUK/フォード・フォーカスST)が、クルマの戦闘力を見せつけるようなレースを披露
「エイデン(・モファット)も素晴らしいドライブをしていたが、僕らのクルマが完璧だった」とレース3勝者ロウボトム

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