伊丹・天神川決壊「バックウオーター」発生か 工事で川幅狭まり水位が上昇 1カ月経過、調査委が初会合

土のうを崩し、天神川より低い住宅街へと流れ込む濁流=5月8日午前2時半ごろ、伊丹市荒牧(兵庫県提供)

 兵庫県伊丹市北部を流れる天神川の堤防が5月8日未明、大雨で決壊した災害で、現場で当時、河川工事で川幅を平時の4分の1程度に狭めていたため、水が行き場を失って水位が上がる「バックウオーター(背水)現象」が起きたとみられることが7日、管理する兵庫県への取材で分かった。2018年の西日本豪雨など過去の水害でも被害を拡大させた現象。決壊から1カ月となる8日に県設置の有識者の調査委員会が初会合を開き、原因解明を進める。(上田勇紀)

 武庫川水系の天神川は、周辺の土地より川底が高い「天井川」。現場では、県が漏水対策のため昨年3月から河川工事を実施。川底の下を通る市道トンネルの拡幅工事も行おうとしていた。

 工事は洪水が起きにくいとされる「非出水期」(11~5月)に合わせ、高さ約2メートルに積んだ土のうで川を区切り実施。当時は、通常14メートルの川幅を約3メートルに狭めた右岸側(下流に向かって右側)に水を通し、流れる量が極端に減っていた。ここに大雨が降って水の流れが阻害され、上流の水位が上がる背水現象が起きたとみられる。

 県によると、左岸堤防が決壊したのは5月8日午前0時半ごろ。決壊部分は長さ約30メートルに及んだ。背水現象が起きたとみられる箇所より下流側の2カ所では、土のうが崩壊。近くの住民1人が避難途中に軽傷を負い、住宅12棟が床上・床下浸水した。

 川幅が狭くなったことに起因する背水現象は、関東や東北などで120人超が死亡した19年の台風19号の際、堤防が決壊した長野県の千曲川で起きたと指摘される。また18年の西日本豪雨では岡山県の高梁川で、支流の水が、水量が増した本流との合流地点で行き場を失うタイプの背水現象が起きたという。

 兵庫県は過去10年の非出水期の1時間雨量を基に川幅などを決め、工事は国土交通省の基準に沿っていたとする。一方、天神川は避難の目安となる水位などを設定した「水位周知河川」でなく水位計はなかった。

 8日からの調査委員会(委員長=大石哲(さとる)・神戸大都市安全研究センター教授)では、土のうの設置に問題がなかったかを含めて原因を調べ、10月をめどに河川工事の在り方などを県に提言する予定。

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