明石に今春開校、「サポート校」の青楓館高等学院 制服デザイン、地方創生、企業と交流…自主性重視した学習支援

グループで制服をデザインする青楓館高等学院の生徒=明石市相生町2

 兵庫県明石市に今春開校した青楓館(せいふうかん)高等学院は「サポート校」と呼ばれる学校。通信制高校と連携しており、卒業すれば高校卒業と同じ扱いになる。ところでサポート校ってどんな授業をしてるんだろうか。独自のプログラムで、個性を尊重する教育を目指すという同校を訪ねた。(有冨晴貴)

 登校時間は午前10時。全校生徒は約20人で、この日はオンラインも含めて11人が出席した。諸連絡の後、学習時間に入る。全員で同じ授業を受けるのではなく、各自のパソコンでそれぞれに学習を進める。最初に一日の目標を設定し、達成できれば過ごし方は自由だ。

 2年生の女子生徒(16)は、日本史のプリントを進めていた。昨年まで別の高校に通っていたが、新型コロナウイルスに感染後、一時は起き上がることができないほど体調が悪化。現在も万全でなく、サポート校の青楓館に転学した。「コロナ以降、もやがかかったように思考がぼんやりとし、文章を読むのに時間がかかるので、自分のペースで勉強できるのがいい」という。

 男子生徒(15)は、いじめが原因で不登校になり、一般的な高校に進学できなかった。同校では、一般入試での大学進学を目指す。入学1カ月ほどだが、すでに半年分相当の単位を取得している。「志望する大学に行きたい」と自主的な勉強に励んでいる。

 午前11時50分からは昼休み。教室で弁当を食べる生徒も、外食する生徒もいる。ファッションやサブカルチャー、学校行事の取り組みなどの話題に花が咲く。

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 午後は自主的な活動をする時間。午後から登校する生徒もいた。この日はプロジェクト・ベース・ラーニング(PBL)の日。グループに分かれて、さまざまなプロジェクトに一年を通じて取り組む。

 制服チームは、新設校である同校の制服をデザイン。基本的に私服の同校だが、式典の際などに着用するために制作する。タブレットにデザインを描き込んでいく女子生徒(15)を中心に「チェック柄とかどうやろ」「男子にはかわいすぎるデザインちゃうかな」と話し合った。生徒はイラストが趣味で、電車内の広告もデザインする。中学になじめず、自由な校風の同校を選んだ。

 ほかにも明石市や網走市(北海道)と連携して地域の魅力を発信する方法を考えたり、神戸市北区の夏祭りに屋台を出す計画を立てたりと、それぞれのグループで議論を深めた。

 午後2時50分。一日を終え、振り返りの時間。勉強や活動の進み具合を確認する。下校時間だが、多くの生徒が残って、勉強や活動に取り組む。

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 同校の岡内大晟代表(28)によると、同校にはさまざまな事情で不登校になった生徒も多いという。この日の活動以外にも、eスポーツや投資の勉強、企業への企画提案など、生徒が自主的に取り組むカリキュラムが多くある。

 また、社会人が教室に来て生徒と交流することもある。この日は、大学時代にハンバーガーショップを開いた起業家が来校。国内外の経済事情や、起業の準備などについて話した。

 生徒たちは教室で、ゲームをしたり漫画を読んだり雑談したりと、はた目には遊んでいるようにもみえる。だが実際には、集団でeスポーツに取り組んだり、専門知識が含まれた漫画を読んでいたり、起業の相談をしたりと、各自の興味に沿った学習をしている。青楓館は、若者たちの自主性を尊重し支援する、新しい形の学びやだった。

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