『楽園』いよいよ開幕 会見レポ 新国立劇場 シリーズ【未来につなぐもの】III

日本の劇作家の新作を届ける【未来につなぐもの】シリーズの第3弾が6月8日より東京・新国立劇場 小劇場にて開幕。
『楽園』は、日本の劇作家の新作を届ける【未来につなぐもの】シリーズの第3弾。□字ック主宰、演出家、映画監督の山田佳奈が戯曲を書き下ろし、劇団俳優座所属で劇団外の作品でも活躍する眞鍋卓嗣が演出を手がける。
ワンシチュエーションで展開される、真摯で時に滑稽な女性7名の会話から、結婚、不妊、介護、パワハラ…女性たちが 直面する問題が浮かび上がっていく。伝統継承と変化に揺れる地方都市、やがて彼女たちの姿を通して、現在の日本に重なっていく。

初日に先駆けてシーンが一部、公開された。舞台は拝所(うがみじょ)。舞台上に「おばさん」(中原三千代)と「娘」(西尾まり)、そして「村長の娘」(清水直子)。そこへ「若い子」(豊原江理佳)がやってくる。

半紙で神事に使う神様へのお金(シルカビ)を作る。そこへ「区長の嫁」(深谷美歩)が、神事の取材を希望するテレビ局の「東京の人」(土居志央梨)を連れてくるも「村長の娘」は反対する。

困った表情の「東京の人」。そこへ、神職の「司さま」(増子倭文江)が大荷物でやってくる。準備に大わらわな面々、その中で取り残された感のある「東京の人」。

いよいよ神事を始めようという矢先に足りないもの(ラジカセと箸)があることを発見、「区長の嫁」と「おばさん」が取りに行く、という物語の出だし、およそ13分ほどの場面だが、服装や行動などでそれとなくそれぞれのキャラクターが透けて見える。

「娘」はちょっと派手な服装、最近嫁ぎ先から戻ってきたらしい、「若い子」はまだ20代前半、なんでも大学生らしい、民宿の息子の嫁らしい。また、選挙も近い、「区長の娘」と「村長の娘」は対立関係にある。「東京の人」は図らずもそこに巻き込まれ状態。神事はつつがなく行われるのか?

それから会見が行われた。今回は登場人物は全て女性、しかも名前ではなく「立場」。

まずは挨拶、役柄。
豊原江理佳「都会から島に結婚して越してきた『若い子』を演じます。4月から稽古が始まり、長いなと思っていたのですが、毎日が濃くって、もう初日です…」

土居志央梨「『東京の人』を演じます。東京の情報番組のアシスタントをしています。7人で団結してみんなで支え合いながら試行錯誤を繰り返し、明日初日ということで、心をこめて演じられたら」

増子倭文江「『司さま』という神に仕える、人のために祈る、という役です。みんなでたくさんの話し合いを重ね、ここまで辿り着きました。楽しみです。皆様、どんな風に観てくださるか、楽しみにしています」

西尾まり「大阪の方にお嫁に行ったのですが、色々ありまして戻ってきた、という役です。お母さんと一緒に暮らす、この島で。これから繰り広げられるいろんな事件を巻き起こす要因となる1人を演じます。一致団結して…話し合いを重ねてきました、楽しみにしております」

清水直子「村長選挙真っ只中、『村長の娘』をやらせていただきます。千秋楽まで完走したい気持ちでいっぱいです」

深谷美歩「都市部からやってきた『区長の嫁』をやらせていただきます。初日を迎えられそうで嬉しいです。お客様の反応が楽しみです」

中原三千代「離島で暮らすおばさん役です。2ヶ月近く稽古を重ねてきました。共演者の皆さんと作り上げてきたものをきちんと舞台の上にのせたいと思います」

司会より質問、対立関係にある清水直子演じる「村長の娘」と深谷美歩演じる「区長の娘」について。

清水直子「舞台上では敵対し合う2人ですが、本当に仲良く楽しくやらせていただいて。いろんな話をしていろんなことを共有してすごく刺激をいただいて、楽しいです」

深谷美歩「これだけ話し合いして進めていく稽古もなかなかないんじゃないかっていうぐらい、みんなでいろんなアイディアを出し合ったり、『もっと、ここはこうした方がいいんじゃないか』っていうことをたくさん話して良いです(笑)」

親子を演じている中原さん、西尾さんに”共感できるキャラクター”について
中原三千代「自分の役ではないのですが、『司さま』。『時代の流れになかなか乗っていけない』みたいなセリフがあるのですが、『それでも自分に課せられた仕事をやり続けるしかない』とおっしゃっていて。私も新しいものにすぐついていくとか、流れに乗っていくとかっていうのはちょっと苦手な方かな?『司さま』の役に共感できるかな?と思います」

西尾まり「私は『娘』という役ですが、実際には2人いまして、どっちかというと『おばさん』役に共感する、私、こんなことばかり言われたらヤダっていうことばかり言ってるんです。だから『おばさん』ですね、気持ちもわかるし」

おすすめ、見どころ。

土居志央梨「私と(清水)直子さんのいろんなことがあるシーンなんですが、そこはやっててすごく楽しいので(笑)。直子さんに追い詰められるシーン、そこを注目していただければ」

豊原江理佳「クライマックスの一番最後、みんなが集まって胸の中に溜めてたもの、全部ひっくり返してぶちまけてしまう、そこが私はすごく、やりながらも圧倒されて…」

増子倭文江「江理佳さんと重なってしまった…皆さんがあっちこっちでブチ切れながら、大爆発していくシーン、その時に私は後ろを向いてずーっと祝詞をあげているのですが、神聖な祝詞の場所であるにもかかわらず。稽古では背中を向けたまま笑ってしまいました。みんなが必死なのに…とても笑えちゃうシーンになってるのがおかしいですね」

豊原江理佳の演じる役についての質問

豊原江理佳「正義感を持っている若い子…人それぞれに正義とか価値観とか違うものですが、自分の正しさを人に押し付ける、正論を、それを我慢できずに言ってしまう、そういう役、気が強いですし、でも不器用な役ですね…綺麗な部分だけではない、生々しいっていうんでしょうか…信念、真っ直ぐな人です」

「楽園」とは?

深谷美歩「実家ですね。家に行けばご飯作ってくれるし、パワースポットですね」

清水直子「劇場が私にとっては楽園かな?日常から地続きで非日常に連れてってもらえる、そういう場所ということで劇場です」

土居志央梨「私も実家です(笑)安らぐ場所ですね」

豊原江理佳「私も実家で(笑)、最近、母が引越しして、雑草が生えてて人がいないような場所、そこが本当に綺麗で静かで地上の楽園」

増子倭文江「稽古場ですか…いろんなことがあるのですが、それをひっくるめて、幸せな時間を過ごせるところ」

西尾まり「私は布団の中です(笑)」

中原三千代「サッカーが大好きで、サッカーの試合を見てる時が一番幸せで、楽園はサッカースタジアムです」

最後にPR。
豊原江理佳「2ヶ月間、本当に皆さんと話し合って良い作品にしようっていうことで、がんばりました!どんな風にお客様に届くのか、ドキドキしてるのですが、ぜひ観に来ていただけたらと思います。お待ちしています」

山田佳奈コメント
実際に取材を重ねてきた今作。俳優7名と演出家の眞鍋さんが舞台上で立ち上げてくださったのは、どこか遠い島の出来事のようでもありますが、我々が直面している多くのことを内在しています。それらが客席の皆さんにどのような形で伝わり、観劇後にどのような読後感となるのか。劇作家として、この瞬間に立ち会えたことを嬉しく思います。

「未来につなぐもの」というテーマで描いてきたシリーズ第三弾として、多くの人に手渡せるバトンとなっていれば幸いです。

眞鍋卓嗣コメント
いよいよスタートします。出演者、スタッフ、全ての方が、この作品にとても前向きに関わってくださったことに心から感謝いたします。昨今、世の中は物ごとの隔たりが極端になったり、いったいどこに向かうのか不安な気持ちになります。お客様には気軽に楽しんで頂きながら、少しでもそのような私たちの現在地とその先について考えを巡らせてもらえたら嬉しいです。

あらすじ
日本のどこかの島の拝所(うがみじょ)。年に一度の神事の日。折しも村長選挙と重なり、その演説が風に乗って聞こえている。
世話役の「おばさん」とその「娘」が準備に明け暮れている。「娘」は最近、嫁ぎ先から離婚して島に戻って きたらしい。「おばさん」はそれを嘆いているのだが、「娘」はどこ吹く風。そこに「村長の娘」が加わって、あ れこれと差配を始める。「村長の娘」は今回の選挙では、父親が負けるわけにはいかないと気合も十分 だ。やがて、「若い子」が現れる。いつものお手伝いのおばあが怪我をして、その代理で派遣されたのだ。 島民も高齢化で、「若い子」のような外部からの移住者に頼らないと、日常生活もままならない。
準備が進むなか、「区長の嫁」が、神事の取材を希望するテレビ局の「東京の人」を連れてくる。「区長の嫁」は村の活性化の一助になれば、と撮影の許可を出したと説明するのだが、今回の選挙は区長が対立候補として立候補しているので、「村長の娘」は区長の一存で決めることではない、と一蹴。対抗意識を剝き出しにする。
そうこうするうちに、神職の「司さま」が登場。次々に準備の不手際を指摘し、一同、慌てふためいて準備を整え、なんとか神事が始まるのだが……。

概要
シリーズ【未来につなぐもの】 3弾『楽園』
日程・会場:2023年6月8日(木)~25日(日) 新国立劇場小劇場
作:山田佳奈
演出:眞鍋卓嗣
出演
豊原江理佳、土居志央梨、西尾まり、清水直子、深谷美歩、中原三千代、増子倭文江

公式HP:https://www.nntt.jac.go.jp/play/blissful-land/

© 株式会社テイメント