「税金の無駄遣い」 諫早市交付の障害者福祉タクシー券、乗客使用で運転手暴言

 外出困難な在宅障害者の社会参加を支援するため諫早市が交付している「障害者福祉タクシー利用券」を市内の親子が使用した際、60代男性タクシー運転手が「税金の無駄遣い」と暴言を発していたことが7日、分かった。父親の60代男性は「障害者も普通に生活できる社会になってほしい」と話している。
 利用券は「下肢・体幹の等級が1、2級で日常的に車いすでの移動が必要」などの要件を満たす市内の身体・知的・精神障害者を対象に、市が1人当たり年間1冊(500円券が48枚つづり)を交付。初乗り運賃の引き上げなどを踏まえ、1回の乗車につき1枚だった使用制限を、4月からは2枚まで使えるよう試行的に拡充した。
 男性によると5月27日、障害のある20代の息子の外出を介助し、市内でタクシーに乗車。障害者割引後の運賃が970円だったため、男性が利用券を2枚渡したところ、制度拡充を知らなかった運転手は「税金の無駄遣いやな」と言い放った。男性は息子を傷つけてはいけないと考え、その場で問いただすことができなかったという。
 運転手は勤務先の聞き取りに発言を認めた上で、「親子に向けた言葉ではなく、自分は税金を四苦八苦して払っているのに、という思いから制度に対して出た(不満の)発言だった。申し訳ない」と釈明。会社側は取材に陳謝し、「従業員の教育、サービス向上に取り組み、再発防止と信頼回復に努める」としている。
 市によると、利用券の年間交付実績は403冊(2021年度)。外出は障害者の生きがいにつながっており、「感謝している。事業を継続してほしい」などの声が寄せられている。本年度は680万円を予算化した。男性は「その日はたまたま自家用車が使えず、タクシーを利用した。利用券を使って外出することを楽しみにしている障害者は多いと思う。ほかの人にはこんな悲しい思いをしてほしくない。障害者への理解、共生社会が進むことを願っています」と話した。


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