『シン・仮面ライダー』海外ファンはどう見た?アメリカでは「素晴らしいメッセージ」と高評価。一方、あのシーンに否定的な声も…

2023年6月4日をもって終映を迎えた映画『シン・仮面ライダー』。日本国内では往年の仮面ライダーファンたちから万来の拍手が送られた本作が、ついに海外でも公開となりました。

日本の「特撮」というジャンルは決してアニメほどの知名度を誇っているわけではありませんが、コアなオタクたちの間では「TOKU」などと呼ばれ、ある程度の人気を誇っているジャンルでもあります。

そんな『シン・仮面ライダー』海外では、日本とは少し異なる受け取られ方をしているのだとか。

『シン・仮面ライダー』公式サイトより

タイではかつての本郷猛役・藤岡弘、が圧倒的人気!

『シン・仮面ライダー』は、石ノ森章太郎原作による「仮面ライダー」を「エヴァンゲリオン」シリーズなどで知られる庵野秀明監督が、現代らしい新しさとノスタルジーを込めて再構築した意欲作です。

抜群の知能と運動神経を誇る青年・本郷猛(池松壮亮)が、人類のより良い幸福を目指す悪の秘密結社SHOCKERに誘拐されバッタオーグへと改造されてしまい、次第に仮面ライダーとして、協力者の緑川ルリ子(浜辺美波)らと共に立ち向かっていく様が映し出されます。

まずは日本に遅れること約2か月。5月20日より『シン・仮面ライダー』が公開となった東南アジア・タイでの反応を見てみましょう。

『シン・仮面ライダー』公式サイトより

もともとタイという国は「仮面ライダー」と非常に所縁のある国でもあります。

タイで仮面ライダーは「赤蟻野郎(アイ・モッド・デーン)」の愛称で親しまれており、以前、初代仮面ライダー/本郷猛役を務めた藤岡弘、さんがあるテレビ番組の企画でタイを訪れた際には、圧倒的知名度を誇っていたのが印象的でした。

街を歩けば、所々で「アイ・モッド・デーン!アイ・モッド・デーン!」と騒がれる。それほどまでにタイの人々の心には仮面ライダーというヒーローが根付いているのです。

『シン・ウルトラマン』を抜く異例の興行収入

そんなタイという国では、再び「仮面ライダーブーム」が再燃中となっています。仮面ライダーのファン層としては「昭和ライダー」がテレビ放映されていた当時、少年だった30代、40代の男性がメイン層なよう。

彼らが劇場へと押し寄せる形となり、なんと!実写日本映画の中ではトップクラスの異例の興行収入を稼ぎ出したというのです。

『シン・仮面ライダー』公式サイトより

これは昨年公開された、同じく日本の特撮作品を代表する「ウルトラマン」を再構築した『シン・ウルトラマン』を抜き去る記録だそうです。

日本では『シン・ウルトラマン』の方が圧倒的に高い興行成績を記録しているので、まさに真逆の結果と言えるのではないでしょうか。やはり、タイではそれだけ「仮面ライダー」に対する思いが強いということなのでしょう。

アメリカのレビューでは驚異の満足度89%!

東南アジア圏では高い人気を誇っている『シン・仮面ライダー』ですが、それでは映画の国、アメリカ合衆国の反応はいかがなものなのでしょうか?

アメリカで『シン・仮面ライダー』は、まずイベントで試写が行われました。その時の反響があまりにも大きかったため、当初500館程度の上映劇場で設定されていたものが、倍となる1000館での劇場公開が決定しました。

さらに上映日も5月30日と6月5日の計2日間となり、アメリカにおける「仮面ライダー」の知名度の高さを証明する形となりました。そして肝心の評価は…なかなかの高評価を獲得しているようです。

『シン・仮面ライダー』本チラシ裏

アメリカの大手映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」では満足度驚異の89%を記録!

評価の内容としても「本作はノスタルジーを大いに感じさせる」や「視覚的にスリリングでアクション満載の大活劇!」といった感覚的に本作を評価するものから、「本郷猛がパワーを持ってしまったことへの葛藤や悲しみを乗り越えることへの素晴らしいテーマやメッセージが込められている」といった改造人間として生きることになってしまった青年の悲哀を描いたストーリー性への評価まで様々な意見が綴られています。

一部では否定的な声も…

イベントでの試写上映時も観客からは歓声が上がっていたというように、アメリカでも仮面ライダーは人々の心を鷲掴みにしているようです。

「仮面ライダー」や「ウルトラマン」はアメリカでもたびたび再放送されており、特に仮面ライダーは、2009年の『KAMEN RIDER DRAGON KNIGHT』を初め、何度かリメイクもされています。日本ほどではないのですが、アメリカでもある程度の知名度を誇っているヒーローと言えるでしょう。

しかし、やはり普段、日本の特撮というマニアックなジャンルを視聴しないファンにとって『シン・仮面ライダー』は少し難しい作品であったことは否めないようです。

本作に対する否定的な意見に目を通して見ると「映画は面白いが予備知識ゼロだとストーリーがよくわからない」や「まるで総集編みたいな映画だ」といった意見が散見できます。

マーベルを見慣れた映画ファンには物足りなかった?

この辺りの評価としては日本のファンとほとんど同意見のように思えるのですが、中には鑑賞中に“爆笑”が起きた場面もあったと聞きます。

その問題のシーンというのが、仮面ライダーとコウモリオーグがバトルを繰り広げる場面。

コウモリオーグを追いかけて、仮面ライダーがサイクロン号で宙に舞い、ライダーキックを繰り出す瞬間でした。そのあまりにもCGであることが強調されたアクション描写に、観客全体から笑いが起きたのだとか!

確かに本作のレビューの中にも「CGがひどすぎる」といった意見もあるようで、近年のマーベル映画を初めとしたヒーロー映画もといテレビドラマでもハイクオリティなCG描写を常に鑑賞しているアメリカ人映画ファンにとっては、少しレベルが劣ると判断されてしまったのかもしれません。とはいえ、『シン・ウルトラマン』と並び、高評価を得ているのは間違いないようです。

日本での上映はほぼ終了してしまいましたが、海外からの熱気がじわじわと伝わってきている『シン・仮面ライダー』。日本のヒーロー作品が世界で旋風を巻き起こしていることがファンとして嬉しい限りです。

(執筆:zash)

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