品薄で注文2カ月待ちも 例年になく何倍も売れる自転車ヘルメット 入荷し即完売を繰り返す人気価格帯は

店頭に並ぶ自転車用ヘルメット=川口市前川の「イオンバイク川口前川店」

 4月から全年齢を対象に着用が努力義務化され、急激に需要が高まっている自転車のヘルメット。販売店では品薄状態が続き、特に普段着に合わせられるカジュアルなデザインや1万円未満の価格帯の物が人気を集め、2カ月入荷待ちの商品も。法改正を受けて購入に補助金を支給する自治体も増えている。埼玉県警の定点観測調査でも自転車利用者の着用率は向上している。

■入荷2カ月待ちも

 「需要の幅が広がり、例年になく何倍も売れている。気に入った物を買おうと2カ月待ちの人もいる」。自転車用のヘルメットを販売している川口市の「イオンバイク川口前川店」の店長蒲池実さん(40)は驚きを隠さない。以前はロードバイクなどレース用自転車に乗る人が主な購入者だったが、法改正に伴い普段使い用として買い求める客が増えている。

 特に人気を集めているのは普段着に合わせてコーディネートできるデザインや帽子風のもの。自転車の色や洋服に合わせてファッションの一部として選ぶ人も多い。5千~1万円程度の価格帯が支持され、入荷即完売を繰り返しているという。

 ヘルメットの品薄状態が続き、なかなか購入できない自転車利用者もいる。週4回ほど自転車に乗る越谷市の女性(75)は「買いたいが、店に置いていないので、まだ購入していない。自分に似合う色味やデザインのヘルメットを買うことができたら」と語る。

 同店ではヘルメットを自転車に保管するための鍵を購入する人も増えた。女性も「籠に入れたまま買い物にいけない。まさか首に下げたり手に持ったりして出かけるわけにも行かないし」と不安を口にする。

■子ども中心に補助

 ヘルメット購入に関する家計への負担を考慮し、県内では購入金額の一部を補助している自治体もある。県防犯・交通安全課によると、県内では少なくとも9市町で購入代金などを補助しているという。

 ふじみ野市と毛呂山町では着用の努力義務化を受けて新たに導入。秩父、蕨、坂戸、八潮、日高の各市や三芳町では以前から子どもや高齢者に補助を行っており、八潮市は4月から対象を全年齢に拡大した。これらの市町では購入金額の全額、または半分の額について上限千~3千円を補助。鳩山町では市内に通う中学生にヘルメットを交付している。

 ふじみ野市では6月から、18歳以下の市民に加え、市外から市内の小中学校に通う児童、生徒を対象に1人当たり3千円を上限に補助を開始。予算は2700万円で、5日時点で約200件の申請があったという。担当課の道路課交通安全係は学校を通じて各家庭に補助制度を周知しているとした上で、「今はまだ補助が始まったばかり。多くの児童生徒らに補助を活用してほしい」と呼びかけている。

■着用率が向上

 県警交通総務課によると、今年1~4月に県内で発生した自転車が関係する人身事故は前年同期比160件増の1532件。死者は1人減の6人だが、負傷者は162人増えて1510人に上った。

 同課では自転車ヘルメット着用率に関して、2月と5月に一般の自転車利用者が多い久喜駅周辺やイオン与野店周辺など県内4カ所で、いずれも3日間、独自調査を実施。2月が1230人中40人で着用率3.3%だったのに対して、5月は1438人中83人で5.8%と2.5ポイント上昇したことが分かった。県警は今後も啓発活動などで県民にヘルメット着用のメリットや未着用の危険性を伝え、普及を促進させていく考えだ。

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