解散風は強まるも…「今夏の衆院解散はない」と予想できる理由(松田馨)

ここ数日、解散風が吹いていると言われ、私の携帯にも多数問い合わせのお電話をいただき驚いております。

岸田総理は内閣人事の際にも情報が前日まで出なかったことや、ウクライナへの電撃訪問を成功させたことなどから考えると、かなり「口が堅い」総理です。ですから今の段階では、岸田総理が周辺にすら解散の発言をしているとは思えません。

今夏の解散が考えにくい3つの理由

今回の解散風はマスコミが煽って吹かせたものだ、という印象を強く持っており、私は以前から夏の解散総選挙はないと予想しています。その理由は3つあります。

①任期満了まで時間がある

衆議院の任期は4年あり、任期満了まで約2年5ヶ月も残っています。自民党総裁の任期満了で考えても約1年4ヶ月も残っているため、いま解散する必要性がありません。

2008年当時の麻生総理、2020年当時の菅総理が就任直後の高い支持率の中で解散に踏み切らず短命に終わったことから、同じ轍を踏まないように早めに解散するのではないかという指摘もあります。しかし、2つの事例は就任直後の高支持率が下がっていくなかで解散時期を逸してしまったのに対して、岸田政権は一度下がった支持率が回復していますので、全く状況が違います。

②政治情勢が安定している

自公で衆議院・参議院の過半数を占めており、内閣支持率も安定しています。岸田総理にとっては自民党総裁選まで力を発揮できる「黄金の1年間」となります。

NHKが行った5月の世論調査でも、衆議院の解散・総選挙を行うべき時期について「来年」が19%、「再来年10月の任期満了までに行えばよい」が41%で、約6割が年内の解散を望んでいません。
【参考】NHKの世論調査結果(2023年5月)

③リターンよりリスクが大きい

仮に夏の解散総選挙となった場合、自民党が過半数を割ることはないと思いますが、議席は減らす可能性が高いので岸田総理にメリットがありません。「任期満了まで2年以上ある中で総選挙を行い、議席を減らした」ということになれば、党内の求心力低下は避けられないでしょう。

「支持率が上がって選挙に勝てそうだから」とか「維新の準備が整う前にやった方が自民に有利」といった言説も散見されますが、衆議院の任期満了まで1年をきっている時期ならまだしも、これだけ任期が残っているタイミングでは議席を減らすリスクの方が大きく、逆に得られるリターンがほとんどありません。

以上が、私が夏の解散総選挙がないと考える理由です。

政治は「一寸先は闇」 突然の決断も

ここからは蛇足ですが、「一寸先は闇」と言われる政治の世界。岸田総理はこれまでの総理よりも考えていることが読めない、突然何をやって来るか分からないのが強みになっている面があります。実際に前回の解散総選挙においても、大方の予想を裏切る日程設定をされましたし、不安定な国際情勢の中で、外交や安全保障上の観点から解散を決断されることもあるかもしれません。

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